第一話 世界の始まり
森羅万象を操る神々が存在する、神界。
弱肉強食。正に力が正義と言う悪魔のたまり場、魔界。
天災を引き起こす幻獣達の住処、幻界。
今なお進歩し続ける優れた科学技術を持つ人間の住む、人界。
4つの世界はそれぞれが独立しており、決して交わることはなかった。
世界の住人達も自分の世界ただ一つと信じ、疑うことはなかった。
だが、ある日その常識は覆させられる。
4つの世界が繋がってしまったのだ。
何が原因か?それは誰にも分からなかった。
しかし未知との遭遇に住人達は皆、行動に出た。
神は友好的関係を築くため、話し合いを求めた。
悪魔は自らより強い者を探すべく戦いを挑んだ。
幻獣は様子を見るべく、傍観に徹した。
そして人間は他世界の知識、技術を欲しがった。
そうして神と人間は友好的になり悪魔は流浪し、幻獣は傍観者となった。
それからおよそ数百年が過ぎた頃、人間はとある発明を完成させる。
神の森羅万象を操る力「マジック」
悪魔の強力な身体強化の力「ルーン」
幻獣の天災を司る力「ザ・スター」
人間はそれぞれの世界特有の力に目をつけ、それを使うことは出来ないか?
そう考えた末の発明が「SS」と名付けられた召喚道具である。
三世界の住人、サードを捕らえその力を行使することが可能になるという、夢のような道具だ。
それは4つの世界が交わった時に出来たとされる、「マナ」と称される力の源を使うことにより使用出来る物。
そしてそれを使い人間は世界征服と言う名の、愚行を犯した。
SSを扱う人間兵「サモンナイト」
優れた技術により完成した殺戮兵器「キラーズ」
そして、人間に協力する一部の三世界の住人。
サードとは桁違いの数による暴力。
まさに圧倒的有利な人界。
何故SSを作り、何故世界征服などしたのか。
人間の思惑など不明のまま、後に「人界統一」と呼ばれる征服行為は圧倒的差で人間達が勝利したのだ。
人界統一から数十年後、とある国の町外れにて。
「早くするにゃ!間に合わなかったらどうするつもりにゃよ!」
「っく!これで精一杯だ!!」
血塗れの少年を担いだ男と、それを先導する猫の耳を持つ少女が走っていた。
「はいはーい!急患だにゃー!道を開けるにゃー!」
彼らが目指しているのは町外れで一番の医者の所だ。
「間に合ってくれよ、小僧」
男は背負う少年に向けて声をかけ続ける。意識が無い少年に返事をする術は無いのだが。
「もうちょいにゃ!もう見えているにゃっ!」
「あぁそりゃいい。俺もそろそろ限界が近い」
軽口を叩ける程度には余裕はありそうだが、少年の容体は今だ不明。
急ぐに越したことはないと、彼らは急ぐ。
そうして、十数秒後。
「おっちゃん!早くこいつを見てくれにゃ!」
先客が居たにもかかわらず、部屋へ潜り込み少年を差し出す彼ら。
この行動が、世界を変えるとも知らずに。