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シャワーを浴びる間乱入しようとするミオカからの妨害に耐えながら素早くシャワーを浴び終え、リモニカが作った簡単な朝食をとった後、装備を確認して二人は家を出た。
もちろんミオカは男バージョンである。
どういう仕組みか今朝拝見してしまった大きな胸もまるで見当たらない。
やはり男としては華奢だがリモニカよりもしっかりした男の身体に見える。魔法の力とは本当に恐ろしい。
狩りを終え迷宮を出ると既に日が落ちていた。今日も初心階層に潜り、メガコッコ5匹を狩った。初心者ハンターリモニカにとっては上々である。次からは中級階層に潜ろうということになった。
ミオカはリモニカと暮らす前は、ソロでハンターをしており上級階層を狩場としていたのだが、今はリモニカの能力に合わせた階層でサポートにまわっている。
これはリモニカがミオカに強くしてほしいと頼んだためである。
そして迷宮でのドロップアイテムを換金し、その帰り道の途中、夕刻でも人で賑わう繁華街、トリート街で突然ミオカが足を止めた。
「お、そうだ。テルミラに用があるんだった。リモニカ、ちょっと先に帰っててくれないか。」
「え、じゃあ僕も着いて行きますよ。」
「だめだ。テルミラは変態魔女だからな。リモニカをやつに会わせたくない。」
「…そうですか。わかりました。早く帰ってきてくださいね。」
「お前目立つんだからフードしっかり被るんだぞ。物騒な輩に気をつけろよ。」
「はーい」
テルミラというのは薬屋の魔女で、巷じゃ結構有名だ。彼女の作る薬は高額だが効き目も抜群との評判で彼女の薬を愛用しているハンター達は多い。
ミオカは時たまテルミラの店に行くが、何の用で会っているのかは知らない。薬を買いに行っているわけでもなさそうである。テルミラとはどういう関係なのかミオカに聞いてみてもはぐらかされてしまう。まあ、誰だって言いたくない過去はあるものだ。
僕もミオカに言っていない過去はあるし。
さて、食料でも買って帰るかと思い食市場を見て回る。と、目の前にメルヘンチックな淡いピンク色の建物が見えてきた。看板には金色で「パティスリーめろむ」の文字がこれまた可愛らしく描かれている。
店の前には焼き菓子でも焼いているのだろうか甘い匂いが漂っている。
リモニカは店の前に立ち止まる。
ぐう、とリモニカの腹がなった。
リモニカはそっと自分の財布を覗いた。
そしてやはり今日はやめようと思い歩き出そうとした時、
カランカランとドアのベルが鳴り、中からフリフリの白いエプロンをつけた少女が出てきた。
「…!やーん、リモニカじゃない!ケーキ食べに来たの?入って入って!」
「え、き、今日はちょっとやめようかなって…」
「もー!何言ってんのよー、あなたが好きな紅茶のロールケーキあるわよ!さ!行きましょ!」
「えっあっちょっと…」
少女はリモニカの腕をがっしりとつかみ、すごい力で彼を店へと引きずり込んだ。