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イケメン女と男の娘  作者: いっくらどーん
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2

リモニカの朝は早い。

どこかで鶏が鳴く声が聞こえ、日の出とともに目を覚ます。


隣のベッドでぐっすり寝ているミオカを起こさぬようにそろそろと一階の居間へと降りる。冷たい水で顔を洗い、シャキッと目がさめると木刀を片手に庭で日課である鍛錬を始める。


彼は自分の少女のような顔がコンプレックスだった。ただでさえ女顔は嫌なのに華奢な体も相まって女の子に見られることもある。


男としてのプライドのために少しでも男らしくありたいと日々鍛錬を続けている。


「…ふうっ」


流れ出る汗を拭い、二時間経ったところで鍛錬を終了し、シャワーを浴びに行く。


シャワーが付いているお風呂場がある家なんてものはこの街では珍しいのだが、家の主であるミオカがどうしてもと言って先月工事を頼んだのだ。


その値段や熟練のハンターの年収ほどの大金である。ミオカの家に来てから半年が過ぎたが、未だにミオカの素性はよくわからない。


本気で戦っているところは見たことはないが戦闘能力は高く、なんと魔法も使えるらしい。魔法が使える適正があるやつは千人に一人の確率で、そのうちろくに使えるようになるやつはほんの一握りだ。そして金はたくさん持っているようだし、あの美貌である。


男のリモニカでも惚れ惚れするくらいの美男子だ。


…しかし、それは外での話である。


せっせと汗でベタつく服を脱衣所で全て脱ぎ去り、ちょうどシャワー室のドアを開けようとした時、


ガチャっ


「……え」


「…あ、ごめん、」


…ミオカが全裸で脱衣所に入ってきた。白い素肌、艶艶の黒髪、寝ぼけているのか目は眠そうだ、身体のラインは優美な曲線を描き、なによりも目を引くのは露わになった胸元の大きな二つの膨らみ…


「っきゃああああ!!!」


叫んだのはリモニカだった。

ああもう、はっきりと見てしまった。顔を真っ赤にして自分の下半身を素早く隠した。


そう、ただ一つ確かなことはミオカが女だということだ。


「っノックぐらいしてくださいよ!てかなんで裸なんですか!脱衣所で脱いでくださいよ!ああもう早く出て行ってくださいー!」


「…ん?ああ、すまんな。入ってると思わなかったんだよ。しかし私の家なんだからいいだろう。朝からうるさいなあ」


ふぁーと呑気に大きな欠伸をする始末だ。全く動じていない。男としてリモニカはなんだか悲しくなった。


するとミオカはニヤリと笑って、


「…なんなら一緒に入るか?」


そう言って意地悪そうな顔をリモニカに向けた。


「っく、いいから早く出てってください!!」


「おおう」


全裸のミオカを追い出し、シャワー室に飛び込んだ。



「…はあ、全くなんなんだよ、なんであんなに堂々としてんだあの人は…」


リモニカはしかし先ほどの刺激的な光景が目に焼き付いて離れず悶々とシャワーを浴び、忘れ去ろうと必死だった。


ミオカは普段外では男になっている。魔法で、だ。魔法で姿を変えたミオカは、身体はどう変化しているのかは知らないが服を着た状態ではどう見ても男である。


しかし顔が全く違うというわけでもなく、どちらも同じミオカの顔である。本人曰く、自分が根本的に変わっているのではなく、周りの目を騙しているのだそうだ。


まあリモニカには魔法のことなんてわからないし、仕組みなんてどうでもいい。


ミオカはそうやって男に扮し、ハンターをやっている。なぜ男になっているのか、と聞いたことがあるが、「趣味だ」と言っていた。

…よくわからない人である。


そして、自分と並んで外で歩くとイケメンと美少女として周りに見られてしまうのだ。もちろんリモニカが美少女の方である。


リモニカはまた悲しくなってきた。

シャワーに打たれながらゴシゴシと強く身体を洗った。

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