この書き出し/締めいかがですか その壱今日の書き出し/締めの一文 【 君が元気ならそれ以上は望まない、なんて 】
君が元気ならそれ以上は望まない、なんて考えてた。昔は。
でも最近思うんだ。
元気なのも考えものだなあって。
毎日どろんこになって帰ってくる。時折すり傷なんかもやんちゃに作って。
子供だもの、健やかに育ってくれたら。そう自分に言い聞かせる
でも、今日なんて、ボロボロになって、泣くまいと口をへの字に結んで帰ってきた。
「どうしたの?」って訊いても何も答えてくれない。
いじめかケンカか、オロオロと気をもみながら傷を洗い、手当てをして。
うとうとし出したので寝かしつけたら、チャイムが鳴る。
玄関を開けたらお隣の奥さんがしきりと頭を下げて、「コレ、つまらないものなんですけど」なんて駅前の菓子店の袋を差し出された。
ご丁寧にどうも、と受け取った袋を抱えて居間に戻り、冷めたお茶を飲んで息を吐いた。
――うちのユカが野良犬に追い掛けられたのを助けてもらったんです。ケガもさせてしまって、本当にごめんなさい。ケガの具合は大丈夫なんでしょうか。
――まあ、犬と……。ええ、今はくたびれて眠っているけど。
――でも、犬に噛まれたのだから病院で診てもらった方が、
――ええ、そうね。そうします。ユカちゃんが無事で良かった。
――本当にありがとうございました。
ケンカかも知れないとは思ったけど、まさか、その相手が犬とは思わない。
元気過ぎるのも困りものだ。
けど、ユカちゃんを助けたのは快哉と拍手をおくりたい。小さくても男の子だなあ。
それでも、犬とケンカをする無謀さはいただけない。そこはちゃんと叱らなくては。
頭痛の種は尽きないのだった。