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それでも、やっぱり君が好き。  作者: 水原琴葉(元・空野ことり)
Mission2 相手と接触しよう
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チャンス

 様子のおかしくなったミナにお礼を言って、俺達は五時間目の授業の用意をするため自分の席に戻っていった。


 五時間目は世界史をやったが、全く頭に入ってこなかった。

 まぁ、俺が馬鹿ってこともあるんだけども。凛のことを考えちまってなぁ……。

 どうしたら仲良しになれるのか、どうしたら近づけるのかとばかり考えてしまう。お陰で先生に当てられた時にはヤバかった。


 まぁ、テスト前に勉強すれば頭に入ってくるだろう、と楽な道に逃げ、トイレに行くために廊下へ出た。

 休み時間のせいもあって、かなり人が歩いていて騒がしい。


 トイレはA、B、C、D組を過ぎた所にある。

 時間的に余裕があったので俺はゆっくりマイペースに済ませ、ついでに他クラスの教室の様子を見る為歩きながら教室を覗く。


 結構先生によって教室の掲示物の配置とか、置いてる物とかが違くて面白いんだよな。


 ふと前を見ると、なんと前に凛のグループが廊下いっぱいに広がって歩いていた。教科書や筆箱を抱いているところを見ると、授業の帰りか移動の最中なのだろう。


 話しかけようと思えば出来る。だが、周りに女子がいて、更に凛は男性恐怖症とのことだ。


 ……まぁ、恐怖症っていってもそんな大袈裟なものじゃないだろ。

 まず、そんな病気あるのか? (れっきりとした恐怖症です)


 まぁどんくらいなのかは話してみたりしないと分からないし、まずは話してみなくちゃなぁ。


 ……とは、言っても。

 俺の前を歩く彼女達は楽しそうに笑い合って喋っている。

 さっき俺に声をかけてきたポニーテールの女子だって、俺に投げ掛けたあの冷ややかな視線はどこへやら。


 いくら俺でも、この中に割り込むことができるほどひどい奴ではない。この間にもB組までの距離は縮まるばかり。


 くそ……っ!


 悔しげに足元の廊下を睨みつけた時。


 薄紫色のハンカチが、ひらりと廊下に舞った。


 俺はすっとハンカチを拾った。心臓が期待でドクン、ドクンと規則正しい音をたてる。


 それを隠す様に笑顔で彼女達に声をかける。

 落とし物なのだから、今声をかけたら『いい人』認識されるという一石二鳥。俺には良い事しかない。


「ハンカチ、落としたよ?」


 え、と彼女達が振り向く中、凛はさっきまでの笑顔が嘘のように強張った顔。

 凛以外の女子4人が顔を見合わせ、


「あたしのじゃなーい」

「うちもうちも」


 などと言っていた。



 ってことは――――――――!



「凛ちゃんじゃない?」


 タレ目の女子が凛に声けた。


 だけど、凛は顔を強張らせたまま立ち尽くしている。

 よく見れば顔が青くなっていて、微かに足が震えていた。


 男性恐怖症って、これほど……。俺が前に立ってるだけじゃねーか。それ、だけで……。


 でも、男を怖がる凛には悪いけど、せめて一回くらいは喋ってみたい。ごめん、凛。


 俺は今までで一番のスマイルを浮かべながら、凛にハンカチを差し出した。


「はい」


「…………」


 なかなか受け取ってもらえなかった。


 さっきよりも顔が青いし、震えが大きくなっている。受け取ることに悩んでいるのだろう。


 早く行かなきゃ授業に遅れちゃう、とショートヘアの女子が呟くと、ポニーテールの女子が心配そうに俯いた凛の顔を伺う。


「凛? 大丈夫?」


 こくり、と重く頷く。

 凛はゆっくりと息を吐き、俺の顔を一瞬見てすぐに逸らす。


「……あ……ありが、とぅ……」


 凛は目をぎゅっ、と瞑り、躊躇いながらもハンカチを受け取ろうとしたが、


「あぅ……。さ、先行ってるっ!」


 くるっと後ろを向き、走り去ってしまった。とても速い足だった。

 でも、今のが彼女にとっての精一杯のお礼だったのだろう。


「あ、凛ちゃん!」


 彼女達はどうすればいいのかとオロオロしていたが、やがて俺にごめんね、と謝ってから凛の後を追った。けれどただ一人、ポニーテールの女子が俺を静かな瞳で見つめて残っていた。


「……どうした、行かないのか?」


 俺が尋ねるのには答えずに、彼女はゆっくりとピンク色の唇を開いた。


「今ので分かったでしょ? 凛は朝倉みたいなタイプが一番嫌いなの。さっさと諦めて」


 な、何だと……!? 俺みたいなタイプが一番嫌い!?


 俺はなぜか言葉を発しなくてはと思い、咄嗟に叫んだ。


「俺はっ……!」


 だが彼女は俺の言葉を聞く気など微塵も無いようで、すぐに別れを告げた。


「じゃあ」


 相変わらず俺に冷ややかな視線を送り、小走りでポニーテールを揺らしながら廊下の角に消えていった。

 胸も微かに揺れていたが、今はそんなことなんかどうでもよかった。



高校ってよく分かんないです……。

校舎とかどうなってんだー!

高校行きたい。


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