嘘? 本当?
最初こそ面倒くさそうな、嫌そうな顔をしていたが、俺が『何でも一回言うことを聞くから!!』と言い頼むと、即オーケーしてくれた。
その時の飛びつきは凄かった……。すぐ反応して目をキラキラさせて……まるで待てを言われて餌を待ってる犬みたいだった。
良かった、のだが……一体何をお願いされるのだろうか。
そんなことはさておき、(早く忘れたい)すっかり上機嫌になったミナの方に体を向けて、ミナ、勇輝、俺の三人でミナの机を取り囲む。
いつもは周りに人がいるミナは、何故か一人だったらしい。
ミナは「んーっ」と宙を眺めながら人差し指を顎に当てた。
「あたし、凛ちゃんと同中だったんだけど……そこまで仲良くなかったかなぁ。たまに喋るくらいで」
「…………は?」
一瞬固まった俺に、ミナははにかみながら慌ててぶんぶんと両手を振った。
「で、でもっ、圭太君のお願いだから頑張るし! 友達に聞いたりとかしてみるから何でも聞いて!」
俺は立ち上がって振られていたミナの両手をきつく握った。
「サンキュー、ミナ! 頼りにしてるぜ!」
いきなり手を握られてびっくりしたのか何なのか、ミナの顔がぼぅっと赤くなった。
しばらく経って、ほんのりまだ紅みが残った顔で、ミナは悲しげに微笑えむ。
「ん。……楽しみにしててよ」
……? 何で悲しげな顔になったのだろうか。
ふと思っていると、黙って俺達のやり取りを見ていた勇輝が、「良かったな」と小声で耳打ちした。
ミナが何か喋りかけてきたけれど、俺の頭の中では脳内会議が始まっていて、今話すことは出来ない。
「今回の議題は『何を質問するか』!! 何か意見ある人は手を上げてくださーい」
伊達眼鏡をかけた俺のチビ分身が司会となり、会議を進める。
俺の脳内会議は、俺のミニ分身が沢山いて、意見を出し合い決めるというものだ。因みに脳内会議は人それぞれ違う。
途端にあちらこちらで手が上がり、ざわざわと喋る声も大きくなってきた。
「ここはシンプルに好きな食べ物」
「誕生日とか」
「いや、住所がいいんじゃねーか?」
「住所知ってどうするつもりだっつーの。家行くのかよ」
「それともストーキングか?」
もう既に会議ではなく討論会になっていた。
十分に意見を出し、司会の後ろのホワイトボードに俺のミニ分身が一生懸命に文字を書いていた。
と、その時。
ピカーン
会議室の天井に付けられている豆電球が眩しい光を出して光った。
「そうだ、あれが本当かを聞いてみなくちゃいけないんじゃないか!?」
立ち上がって一人が言うと、周りも立ち上がって「そうだそうだー」と連呼する。
「よし、意見がまとまったぞー!」
司会が言うと、俺は普通に、いつも喋るみたいに口を開いた。
「凛が男子嫌いって本当か?」
「……ぁ」
その途端に急にミナが視線を逸らし、黙る。……え、聞いちゃいけないことだったのか……!?
黙るミナと汗をだらだらと垂らす俺を見て、勇輝が慌ててミナに問いかけた。
「……ど、どうした?」
ミナは近づいた勇輝の胸を手で押し、また、悲しげに、儚げに微笑んだ。
「大丈夫」
――――――刹那。
勇輝が息を呑んだのが分かった。
何かを察したような様子で、切なそうな表情で俺を見つめる。
え? 何? どうなってんの?
全く話についてけねー……。
ミナは振り絞るような掠れた声で俺を見ずに問の答えを告げた。
「本当、だよ。凛ちゃんは男子恐怖症」
神様。
漫画のように次々と壁が出てくる恋愛がしたい、って確かに言いました。
けど、こんな巨大な壁。
あまりにも高すぎないか!?
感想orアドバイス、お待ちしております。