仲良くなる為には? 2
* * *
俺は1-B、つまり俺のクラスに戻り、中学からの優しき親友――――――渡部勇輝の前の席に座る。
勇輝は柔らかい、色素の薄い髪をしていて、どこから見ても優しそうな雰囲気のイイやつだ。俺の相談にだって乗ってくれるし、俺の受験勉強にも力を貸してくれた。勇輝無しではきっとこの高校に入学することはできなかったのだと思う。
勇輝は丁度、何かのパンフレットのような、冊子のようなものを見ていた。もしかしたらこの高校のものかもしれない。少し前に、男子テニス部に入りたいとかなんとか言っていた気がする。
席に座った俺に、勇輝はパンフレットのような、冊子のようなものを閉じて「おかえり」と声をかけた。
「ん」
挨拶を一文字で返し、大きく息をつく。
それから勇輝に、俺は軽く頭を下げた。
「あー……邪魔しちゃって悪いな」
謝る俺に勇輝は笑いながら左手をひらひらと振った。
「いいよ、別に。圭太と喋ってたほうが楽しいし」
「勇輝……!」
何だか感動的な会話になっていた。こんなことを普通に言える勇輝が俺はすごいと思う。
俺は上履きを履いたまま座っている椅子の上に右足を置いて、膝の上に顎を乗せた。
「でー?どうしたの、圭太君?」
ちょっとおちゃらけた口調になった勇輝を見ずに、俺は目を伏せながら呟いた。
「……俺、一目惚れしちゃったかも」
俺のその言葉に、勇輝は一瞬驚いてすぐに柔らかく微笑んだ。
「……そっか。あの、圭太がね~」
一目惚れのことに対してではなく、自分から恋をしたことに勇輝は驚いたことなんて、言われなくてもすぐに分かった。
当たり前だ。
中学の頃の俺なんて、……最低な、恋なんて、ってやつだったから。
俺は頭から過去のことを振り払い、少し声を落として相談の続きを再開する。
「涼峰凛って知ってるか?」
「へ、圭太君は凛ちゃんに一目惚れしたのっ?」
「そーなん……えええ!!?」
この場に出てくるはずの無い女子の声に、俺は驚愕しながら声のした斜め後ろを見た。
そこには、最近仲良くなったクラスメイトの女子が笑いながら俺を見つめていた。両手を白い頬に当て、肘をついて俺を見つめている彼女は、前髪を結んで後ろを流している髪型が特徴的だ。胸は、……ダメだ。さっきのポニーテールの彼女を見た後だといつもよりも小さく見えてしまう。
「ミナっ、お前……っ!話聞いてたのか!?」
仲良くなったばかりの人と恋話をする気には全くならない。恋話をする相手は俺の大親友の勇輝だけで十分だ。
絶対誰にも言うなよ、言ったら、と言おうとした俺に、勇輝がこそっと耳打ちをしてきた。
「ミナにその子のこと、教えてもらえば?しってるかもしれないし」
……教えてもらう、ねぇ。いつもの俺ならそんなことはしない。
だけど彼女が本当に男子嫌いなのならば、少しくらい彼女のことを知っていた方がいいかもしれない。
それに、無条件で知られてしまったのなら。協力してもらうくらい、バチは当たらないよな? 女子だし。女子だし。『凛ちゃん』と親しげだし、凛の事、色々知ってるかもしれない!
この際情報提供してもらおう!
丁度悩んでたところに来てくれてサンキュー、ミナ!
まだ凛の知りたい事を知っているかも分からないのに、情報提供するとも言われていないのに喜んでしまった。
ミナは可愛らしく小さな舌をちろりと出して「てへっ」と笑い、手をひらひらと振った。
「聞こえちゃったんだよね~~~~。ごめんね?」
「フッ。それは、まぁいい。が!」
急にキャラが変わった俺を、ミナは若干「え、何コイツ」みたいな目で見ていた。……ボケだから突っ込んで欲しかった。
俺はミナに向かって手を合わせ、目をぎゅっ、とつぶる。
そして小声で言った。
「凛のことを教えてくれ!!」
またまた新キャラ女子、登場。
前回のポニーテールの女子はなかなかのクセモノです……。
それにくらべてミナは、控えめな性格です。
なんとも可哀想なやつでして……(ネタバレしちゃう)
ミナも今後の物語に大きく関わります。
感想、アドバイスお待ちしてます。