ナンパ 2
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クラスにいる時のようなおちゃらけた雰囲気は影もなく。
俺は、目の前の不良を睨んでいた。
だが、こんがり焼けたトーストのような顔の色の男は、俺と反対に余裕のよっちゃんな笑み。……むかつく。
軽く苛立ちを覚えながら、睨み続ける。
―――――あいつら、大丈夫かな……。
そう思った時、男が動いた。
やばい、来るか!?
危険を感じて身構えたが、男はただ一歩踏み出しただけだった。何だか馬鹿にされたようで、またむかつく。
「……お前は、彼女達が好きなんだな」
俺は答えない。
このような質問は、答えないのが懸命だ。
男は苦笑し、更なる質問を投げかけた。
「どっちが本命だ?」
なぜこんな質問を―――――と思ってからはっとする。
連中は、涼峰さんの名前しか出していなかった。茜も涼峰さんと一緒に連れて行かれそうだったが、茜はオマケだ。
つまり、俺が敵か、敵ではないかを調べている―――――のだと思う。
「プライベートなんで、いくら先輩といっても教えられませんよ?」
笑みを浮かべる俺の頬には、冷や汗が出ていた。
そんな俺に、男がこっちにこい、という仕草をした。
「とりあえず一発、来いよ」
馬鹿にされまくりなのが悔しくて、感情任せに拳を後ろへ引き、思いっ切り前に向ける。だが、俺の拳は男の手の平で止められていた。
おい、マジかよ…。
「やっぱり、当たんねぇな。喧嘩やったことねぇだろ」
答える代わりに舌打ちをする。
ふっ、と笑ってから言う凛々しい不良のリーダー。
「そんなもんなくせに、よっぽど凛を守りたいようだな……」
「どうせ俺は喧嘩もろくにやったことの無いもやしっ子だ。悪いか?」
ふと、低いうめき声が耳に入った。同時に、衣擦れの音や木の葉を踏んだような音が聞こえる。俺が退けた三人の雑魚キャラが意識を取り戻したようだ。
状況は更に悪くなってしまった。カッコよく立ちながらも、俺の心の中では冷や汗が洪水を起こすほど分泌されていた。
やべーよ俺! やっべーよ俺!!
あのいけ好かない茶色の男は立ったままで俺を見つめている。あれ、俺の態度がいけなかったのかな……。
そして、三人のヨロヨロとした男達は、気味の悪い笑みを浮かべながら俺をじりじりと追い詰めていく。キ、キモい……。
あーぁ……。俺はもう終わりかもしれない……。でも、最期に好きな子を守れてよかったな……。って、カッコ良俺。
もう既に、三人の雑魚キャラは俺のすぐそばまで迫っている。俺が死を覚悟した、その時。
「―――――やめろ」
このイケメンボイスは、焼けた顔の男の声だ。俺と周りの三人が驚いて彼を見る。
その表情からは何も読み取れない。
眉毛ピアス男が、思わずというように戸惑って声を上げた。
「ゆ……祐吾……? ……どうしてだよ?」
「今日はもう戻るぞ。お前等だってケガしてんだろ?」
優しさの含まれた言葉に、眉毛ピアス男が恥ずかしそうに唇を突き出し、耳の下あたりをポリポリかいた。
「まぁ、な」
おいおい、不良の友情劇なんていいって……。
三人は大人しく支持に従い、リーダーの元へ戻ってく―――――前に、ありがちな悪党の捨て台詞を吐いた。
「覚えてろよな、一年坊主!」
本人達にとってはカッコイイのかもしれないけど、見てる側からしてみればかなりダサかった。リーダーさんでさえ苦笑いしている。
こうして、涼峰さんと茜を襲った不良たちは、去っていった。ほっとして安堵の息を漏らす。
と、立ち去ったはずの男の声が聞こえた。
「おい、一年生」
このイケメンボイスは『祐吾』と呼ばれていた茶色いリーダーだ。緩んでいた筋肉が一気に縮み上がる。
「なっ、まだ何かあんのかよ……!?」
顔を上げ、何度もした睨みをきかせる。だが、全く効果は無し。
少し先に立つ凜とした顔の男は薄く微笑んで、自らの名を口にする。
「オレは羽柴祐吾。お前は?」
なぜ名前を聞いてくるのかと謎に思いつつ、俺も自分の名をぼそりと言った。
「……朝倉圭太」
意地悪して小さな声で言ったのに、不思議と伝わっていたようだ。いや、不思議を通り越して怖い。
羽柴は「じゃあな、圭太」と最後に声をかけると、今度こそ仲間達を引き連れて帰っていった。
ここは、校舎の影で日陰になっていて、だいたいじめじめしている。そんな地面に、抵抗もなくドサリと座った。思わず、校舎の壁に背中を預けてしまう。
「……くそったれ」
吐き出すように言う。
色々な感情が溢れすぎて、若干混乱状態だ。気持ちが一つに定まっていない。
生まれて初めてのケンカ、涼峰さんと茜が不良に絡まれたこと。たったの二つのことだけなのに、気持ちはそれ以上に多い。それと同時に、考えることも。
あれ、俺って何しに来たんだっけ……。衝撃的すぎるものを見て、記憶が飛んだのかな。
だんだんと閉じていく、俺の目の前の世界。
そうだ、俺はあいつらのコ〇・コーラを買いに―――――。
呆気無く、圭太の目の前は真っ暗になった。
喧嘩シーンとかマジで初めてで、ドキドキしてしまいました………(*゜-゜*)
これくらいで下手なので、アクションとか絶対無理ですね(笑)
てゆうか、このシーン書くつもりがなかった…。けれど、こういうことでいろいろな体験が出来るので、やっばり計画通り行かなくてもいい時はいいですね。
これからも『それでも、やっぱり君が好き。』をよろしくお願いします!