「どうしてそうなった!?」
さんざんだった授業が終わり、俺が号令後机に伏せて(倒れて)いると、勇輝が苦笑いしながら俺の机へやってきた。
「よ、圭太。大丈夫か?」
俺の前の席の椅子を引き、勇輝は横に座った。
俺は体を机に倒したまま、右手を上げる。
「んー。大丈夫……けど、成績下がったなー」
「だなー」
ははは、と勇輝が笑う。俺も俯きながら笑った。
何て平和な会話なのだろう。さっきあんなことがあったため、この平和がとても愛おしく思えてくる。なんの変哲のない会話を交わすのは平和の象徴だ。
が、その平和はすぐに終わりを告げた。
「どうして遅刻したんだ?」
俺は正直言って、さっきのことを言うかを迷っていた。
ミナから貰った情報では、やはり凛はモテるそうで、『涼峰凛には誰も手を出さない条約』というものがつくられているらしい。何だそれ。
俺はそれを知った上でさっきのことをしたのだが、あまり面倒臭いことにはなってほしくない。面倒だからだ。
それに、恋愛については人に広めたくない。公認カップルとか、冷やかされたりとかまっぴらだ。凛もそういうのは嫌がるだろう。
だが、勇輝にはもう好きな人を言ってしまったし、何より俺の親友だ。一人くらいならいいだろう。
鼻でゆっくり息を吸いながらゆっくり顔を上げ、上げるとゆっくり鼻で息を抜く。ポイントはゆっくりやることだ。因みになぜこんな行動をしたのかは不明だし、メリットはない。
俺は黒板横に貼ってある予定表をチェックする。さっき終わったのが二時間目、三時間目は国語か……。
俺は時計を見ながら勇輝に提案する。
「なぁ、次の時間サボらねぇか?」
勇輝は一瞬目をぱちくりさせ、含み笑いした。
「え、何? 成績下がるんじゃないの?」
「まぁいいんだよ」
勇輝はいいのかよ、とケラケラ笑った。
勇輝は別にいいらしく、俺と勇輝で教室を出ようとすると、友達と喋っていたミナが唇を尖らしながら声を掛けてきた。
「朝倉と渡部サボりー!?」
「まぁなー」
勇輝が喋らないので俺が返事を返す。
ミナはなぜか気落ちした様子で俺を見つめた。
「あたしも、サボりたいなぁ……」
俺は仕方無いな、と溜息をつき、ミナの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「お前はちゃんと授業受けろよー」
そう言い残し、俺は教室を離れていく。勇輝も俺の後をついてくる。
俺はその時、ミナの顔が赤くなったのに気が付かない振りをしていた。
ミナと圭太に変化が……!?
前々から分かっていた方も居るかもしれません。
すいませんね……。
いきなり圭太と凛と茜が待ち合わせみたいなことをしてて、ビックリしたでしょう。
しかも茜って誰だよ、みたいな。
それまでの経緯をやっと次話で知れますよ。
お楽しみにしてくれれば幸いです。