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それでも、やっぱり君が好き。  作者: 水原琴葉(元・空野ことり)
Mission2 相手と接触しよう
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実行 2

「凛のことが好きだ。――――――――付き合ってくれ」



 きっと、あの二人に察しはついていたと思う。

 茜はつまらなそうに溜息をついて、静かな光の無い瞳で俺を見ていた。


 茜の警戒が薄くなり、後ろに隠されていた凛が姿を現した。

 小刻みに震える細い足でどうにか立っている凛を見ていると、場違いだが生まれた直後の小鹿を思い出す。

 俯いた顔は耳まで赤く、なぜ凛が赤くなっているのかと疑問に思った。


「……あ、あの、私、男の、人……っが、こ、怖くって……だ、だから……」


「知ってる」


 途切れ途切れに言っていた凛の顔が、すっと前を向く。

 俺と目が合うとすぐにまた俯いてしまった。


「だ、だったら、……何でっ……」



 凛の一言一言が愛しくてたまらなかった。

 男が怖いのに、俺と一生懸命会話をしてくれている。それだけで嬉しかった。


 俺は凛を真っ直に見つめながら一歩足を踏み出し、もう片足も前へ動かす。

 茜が反応したが、凛を見つめていた俺は気が付かなかった。




「俺が凛と一緒に男性恐怖症を治す! 治ったらもう一度、考えて欲しい」




 凛と茜は驚愕の表情で俺を凝視していた。

 でも、茜は俺と凛の事だと理解しているのか、話に一切口出ししてこない。その配慮が嬉しい。


 凛は「で、でも……っ」と呟いて、茜も思っているだろうことを言葉にした。


「ど……どうやって、治、す……の……?」


「えっ!? ……ま、まぁそれはお楽しみと言うことで!」


『…………(ノープランか)』


 二人はすぐに悟った。


 この質問はされると想定していたのだが、プランが全く浮かばないまま今日になってしまい、仕方が無いので「それは……秘密だっ」みたいなことを格好良く言おうと思っていたけど声が上ずり、バレバレな言い方をしてしまったのだ。


 てか言い訳長っ。



「……っ、絶対、む、り、だよっ……。治せ……な、い」



 カチン



 ネガティブすぎる凛の発言に、俺は思わずカチンときた。



「俺が治すって言ったら治すんだよ! 卒業までにはバッチシ喋れるくらいまでにしてやるし!」



 思いっきり、久しぶりの大声で言ってやった。

 しばらく二人は唖然と俺を見つめていて、その数十秒がとてつもなく永い時間に感じられた。


「ふっ……はは……はははっ。朝倉、自信満々ね」


 今まで沈黙を貫いてきた茜が、笑った。コイツ笑うのー!?

 いや、まぁ笑うっちゃ笑うんだろうけど。こんな感じで、俺に向かって笑うことは無いと思っていた。そして結構可愛い。まぁ、凛のが可愛いけど。


 俺が驚いていた間にも、茜は口に手を当てて笑いながら「卒業までって期限長くない?」などと言っていた。


 ふん、勝手に笑ってろ。一応計画は立ててるんだぜ? オーケーされた場合の、だけど。


 茜は、俺に凛のことを諦めて欲しいから邪魔をするかと思ってた。

 けど、何を考えているのか、凛にこんな提案をし始めた。


「……ね、凛。一週間だけ朝倉と、休み時間とか一緒に居てあげれば?」


 その瞬間、凛が露骨に泣きそうな顔をした。「無理無理勘弁して」という顔だ。


 な……何で茜が凛にそんな提案を!?

 茜は凛を自分の方へと引き寄せ、耳元でごにょごにょと囁いていた。そう、正に『囁く』がピッタリだ。

 何を話していたのだろうと、この後も気になって仕方がなかった。


 あー、いいなー、そんな至近距離で居られて。俺その役やりたい。


 俺の視線を感じて、茜は自慢げに笑いながら無駄に凛に触れていた。


 くっ…………! ムカつく!


 秘密話が終わったらしい凛は、べそをかいたような顔で「でも……っ」と言っていた。


 悩む凛を茜は、ご機嫌な様子で見つめていた。鼻歌でも歌い出しそうな勢いだ。


「うぅ﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏っ」


 凛は悩んでいる!! ……なんで悩んでるんだ?


 曇った表情で、凛はすっと顔を上げる。


「……そっ、そのじょうっ、けん、のむ……っ」


 その瞬間に、茜が頬を朱に染めて凛に抱きついていた。


「そ、その条件って俺のやつか!?」


「流石凛だね! ふふ、ふふふふふふっ」


 完璧スルーされた。


 俺を無視した茜はなんかニヤついている。引いたわー。


 と、耳に馴染みのあるチャイムが聞こえた。

 俺が焦って二人を見ると、


「じゃあお昼来てよ。じゃあ」


 茜が凛の背中を押しながら、階段を駆けていくのが見えた。『じゃあ』が被って妙な台詞になっている。


 おい待て、お昼、来てよ……?  まさか一緒に食べれるのか?!


 なんという幸せ!! って……



「急がなきゃやべえぇぇぇぇぇ!!!」



 俺は必死に廊下を走り、すでに先生の立っていた教室に飛び込んでいった。


 それは、火曜日のことだった。

やっと本編入ってきた感じです~~!

書きたかったあのシチュエーションが書けるーっ!!

と、ご機嫌な私です。


茜のキャラが良く分からなくなってきた。

ネタバレは駄目なのですが、茜はちょっと複雑でして。


どれくらい長引くのかはわかりませんが、どうぞお付き合いくださいませ。



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