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短編集

猫と幽霊とお邪魔虫

作者:

交通事故で死んで早七年。

大好きな妹の側から離れたくなかったわたしはあの世に行くこともなく今日も猫のクロとともに妹の傍にいる。


「おはよ~~」


「おはよう。ねぇ、湖都は数学の宿題やった?」


「一応………でも難しくて自信ない」


「あたしも~~~ねぇ、答え合わせしていい?」


「あ、私もお願いしたい」


きゃきゃと笑いあいながらノートを見せ合いっこする妹とその女友達。その側に浮かびながら私は微笑ましい気持ちで見守っていた。


『あんさん。ニマニマして気色わるいでぇ』


「うっさいわね。妹の可愛さを愛でるのは姉の特権よ。気色悪くなんてないわ」


『………まぁ、あんさんは死んでも妹に付きまとっている筋金入りのシスコンやからね……』


ふんっ!何よ!あんなに可愛い妹がいたら心配であの世になんていっていられないのは当たり前じゃない!!

悪い虫とか悪い虫とか悪い虫とか!!付いたらどうしてくれんのよ!!


『………妹はんに近寄る男限定で悪霊化しとりはるなぁ………』


「ちょっと悪寒をさせたり、不運な目に遭わせただけじゃない。もちろん、湖都に悪い噂がたたないようにはしているけど!」


おねぇちゃん、そこらへんは抜かりないよ!


どうだ!と胸を張ったら何故だかクロはあきれたようにため息をつくとひょいとわたしの肩に乗ってそのまま目を閉じてしまった。

なによ……その、こいつ何言っても駄目だ~~みたいな態度。失礼しちゃうわね!

じろりと肩のクロを睨みつけてから再び湖都を見守る。

おねぇちゃんおねぇちゃんとわたしの後を付いて回っていた小さな妹は可愛さはそのままだけど八歳から十五歳に成長していた。

まぁ、幽霊なのにわたし、何故だか成長しているから年齢についてどうこう思うことはないんだけど………。


湖都の頭を撫でる。だけどわたしの手は湖都に触れることは出来ず、また、湖都もわたしに触れられていることすら気づかないで友達と話している。

悲しくて、切なくてわたしは俯いてしまう。


「…………」


ぎゅうと手を握り締める。そして………。


「あ~~~~~もう!!幽霊になってなにが悔しいって湖都に触れない喋れない見られないことよ!!こ~~~んなに可愛い湖都に認識してもらえないって何それ拷問!!」


通り抜ける身体で湖都を抱きしめながら叫んだわたしの後頭部にクロの尻尾が勢いよくぶつけられた。



幽霊同士の喧嘩ってどんだけ罵っても取っ組み合いになってもクロの爪に引っかかれようがわたしがクロのひげを引っ張ろーが周囲には欠片たりとも認識できないのだからいいのか悪いのか。

しっかし幽霊同士なら痛みを感じるって理不尽よね!まぁ、怪我も痛みをすぐに治るんだけど。


「いっっつ………相変わらずクロの爪は凶器よ」


『あんさんもひげはやめろと何度言ったらわかるんでっか』


「お~~い皆席につけ!」


にらみ合い第二ラウンドに突入しかけたタイミングで先生が入ってくる。互いにひと睨みしてから戦闘態勢を解いた。


お互いに「今日はここまでにしといてやる!」という気分だっただろう。そこらへん長い付き合いだからなんとなくわかる。

そうこうしている間に朝の連絡が始まっていた。


「今日は転校生がこのクラスにくるぞ~~~」


転校生?へぇ、どんな子だろう。湖子と仲良くなってくれる女の子だといいな。

わくわくしていると先生が「はいってこ~~~い」と廊下に声をかけていた。


『「~~~~~~っ!?」』


突如私の背筋に物凄い悪寒が走る。肩に乗っているクロなんて全身の毛を逆立ててしまっていた。

ピリピリとまるで生きていた頃に感じた静電気のような感覚。


「うぁ………なに、これ………」


『わからへん。だが………なんや逃げ出したい。この場におりとおない』


「同感」


本当にそうなのだ。逃げろ逃げろと理屈じゃなく本能が警鐘をならしている。いやだこわい。

だけど。

ちらりと湖都を見る。

危険が近づいているのだとしたら湖都を守らなきゃ。

逃げ出すわけにはいかない。

クロに逃げていいよと言ったけど「あんさん置いて逃げたら後で何言われるかわかったもんじゃありゃしない」と拒否された。


ガラガラと引き戸が開けられる。


わたしが成仏するその瞬間まで天敵として対立することになる少年との出会いまであと数秒。





「湖都に近寄るんじゃなぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~!!」


「そっちこそいい加減に妹から卒業して成仏したらどうですか?なんなら無料で手伝いますよ?」


「え、え、あの何がどうなっているの?」


『はぁ~~~~うるさい』


もしも、このどんなに妨害してもめげずに反撃しやがる少年が湖都の恋人に納まりさらには数年後、ウェディングドレス姿の超可愛くて綺麗で可憐で(以下略)な妹の隣に並びやがることがわかっていたのなら幽霊の存在全てを賭けてこの場で抹殺してやったというのに!


『まぁ、相手の方が能力強いから払われんのがおちやな』

「うっさいっ!」


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