epilogue_Ⅱ
彼女がいなくなった。
走っていた。周りの訝しげな視線は目に入らず、一心不乱に彼女を探した。顔にかかる茶髪さえ、最早無き者だった。まるで、彼女に会ったあの日のようだ。いや、でも、あの日より確実に、顔色は悪いだろう。
彼女の行きそうなところは既に行ったし、もう何日走り続けているか分からない。流石に疲れているが、休んでいる場合じゃない。
なんでもいい。彼女に会えるなら、なんでもするから。走り続けて一週間がすぎ、一ヶ月がすぎ、――そして、結局会えなくなった。
初めて心の底から絶望を味わい、哀しんだのを覚えている。
それからは何も考えなくなった。食欲もなく、一日何も食べない時さえあり、部屋から出ない。ずっと、ずっと、彼女のことだけを考えている。どうして、いなくなったのだろうと。思えば彼女も、前日のあの日は様子がおかしかった。実は何をしていたんだ。何かあったのは確実なのに、何も聞きたさなかった。
探し続けて二か月後の日。――やっと、彼女を見つけた。
彼女は間違ってつけてしまったテレビの中にいた。随分と雰囲気が変わっていて、勝気な笑顔を浮かべていた。何か言っているようだが、全てが笑っている彼女に見入っていて、正直耳に入っていなかった。
会いたい。彼女に会いたい。
金属バットを片手に走った足は、あの時よりも軽い。伸びた髪を揺らしながら踏みしめたその道を今も覚えている。
ようやく見つけた。俺のあの子を。もう、二度と逃がさない。
その行動が破滅に向かうとは知らずに、ずっと走っていた。




