閑話_追憶する未来_①
全て消えてしまえと思った夏。寂しくて全てを望んだ冬。
夢を見たんだ。前世の記憶を、夢として。前世なのに、ひなつが出てきて、一緒に遊んだ夢。こんな夢を見たかったのだろうか。
その時はまだ死にたがりじゃなくて、凛音の親愛を素直に受け取れた純粋だった頃。無邪気な笑顔が常時で、こんな醜い感情なんてまるで知らない、輝いていた。
凛音と家で遊んだ時だった。通信したゲームで張り合っていて。終わって凛音が帰ろうとした時だった。寂しいな、って思った時に、ひなつが現れて。
感情を察知して来るなんて、まるで王子様みたいじゃないか?
自分にこんな乙女のような思考が残っていたことに驚いた。それを語ると、夢の中のひなつは曖昧に笑い、何も言わなかった。
次の夢に出てきたのは、白夜だった。それまでの経緯は同じ。凛音とゲームして、帰る頃に現れた。まるで守護霊だ。二つの槍はどこまでもついてくるらしい。
ひなつに話したことを白夜に語ってたら、片眉をあげて呆れられた。おや、不愉快かな? 別に、なんとなく嫌だっただけ。それを不愉快って言うんだと思うよ。あっそう。
守護霊に呆れられるのも新鮮だ。
今度は凛音とイリアが出てきた。凛音は制服姿で、イリアはいつものゴスロリだ。目の黒色の目隠しも忘れていない。同じことを、また問うた。
凛音は泣きそうに顔を歪め、イリアは無言で唇を噛んだ。何かを悔やんでいる二人に、かける言葉はない。それは、ただ、自分の、――――――――。
その次は桐吾と大地が出てきた。桐吾は汚物を見るような目で見て来たから、実態がないと知っていても目潰ししようとした。そうしたらもっと眉を顰められて、ヒステリーになり、結局大地がいつも苦労を背負っていく。無表情だよね、いつも。
最後には秋名が出てきた。目を赤くして、俯いて何も言わない。桐吾と大地には問わなかったことを、秋名には言った。まるで夏名のようだね、と。悪鬼のような顔を、今でも忘れない。アンタがいなくなって、楽しかったわよ。そうかい。泣き言を言わないのは憎たらしいわね。僕に泣き言が似合うかな?
秋名は泣いた。彼女は、世界の全てを憎んでしまった。だが、それでもいい。もう、時間がなかった。
さて、踊ろうか、愚かな神よ。その千切れそうな足で、精一杯踊ってくれ。
僕はそれを笑うだろう。嗤うよ。絶対ね。
そんなに笑わないでくれ、君が死んでも、僕は一切悲しんだりしないから。
感動のフィナーレはない。涙なんて無用だ。来世で会おうなんて言わないさ。ただ、僕のことを忘れないでほしい、とは言っておこう。また腐ってくれたら堪らないからね。
じゃ、転生しようか。バイバイ、会えないけど、来世でまた、なんてないからね?




