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リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第一章 少女の転生、神のゲーム
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怪異の集まる街_Ⅰ


 〝死体〟はまるでないものかのように、確かに存在していた。だが、不自然にもそこに存在していて。あまりにも自然に思えるのは、周りがどうしようもなく壊れていて狂っていて、そう、まるで死人のようだから。

 木を隠すなら森。死人を隠すのは死人の中に、ってやつだ。


 三日月に歪むを隠そうとはしなかった。周りから見たら、天使の笑みだろう。それは神が微笑んでいるんだろうね。しかし、その目はまったく、もはやないと言っていいくらいに笑っていない。

 一瞬。一瞬だげ、禍々しい空気を纏った。


 が、本当の一瞬に誰も気づくことなく、私のデタラメな笑みに騙され、笑い合っている。

 ――腐ってる。もはや笑える。



「樋代、まじで大丈夫かよ? さっきから黙って、何考えてんだよ」



 死体のことだよ。なんて言ったら驚くかな。ある意味驚くかもね。あるいは、ああそれか、なんて言って話題の元になってしまうかもしれない。

 または汚物を見るように眉を顰めて、違う話題に走るかもしれない。どちらにしろ、――――ああ、なんて虫唾の走るお話。

 微笑むと赤くなる越智くんに、同じように微笑む秋名。



「大丈夫だよ。それよりも、次の授業の準備は終わったのかな?」

「あ、やべ、次なんだっけ?」

「歴史だよ」



 越智くんは社会の準備を始め、秋名は席に向かった。私は、すでに準備を終えている。

 私は毎日欠かさず、社会だけはサボらずに出ている。それは熱が出ても、眠たくなっても、同じこと。その中でも地理は出ず、そう、出るのは歴史のみ。


 理由がある。〝違和感〟だった。


 始めは小さな違和感だった。時々、ある単語を聞くと耳鳴りがしたり、妙に胸がざわつく。本当に小さなもので、気づかない時もあった。指が痛んだり、手首が痒くなったり。


 最近はかなり酷い。保健室に行ったのは、一時間目の授業である歴史を習っている途中、耳鳴りと〝何か〟の声。目の前が赤く染まり、意識をなくした。二時間目は国語であり、得意教科でもあるからよかった。だが、また三時間目は社会。まだ終わってない歴史の範囲。


 それに、〝声〟。


 声は女性の声であるが、少年の声にも聞こえる、耳に馴染む中性的な声。でも、どこで聞いたのか、誰の声かは全然覚えていない。だって、おかしい。私は完全記憶能力の持ち主なのに? 思い出せない? …………ありえないね。

 声はどんどん大きくなり、聞こえてきたのは、何度も何度も呼びかける声。警告とも言える、どこか楽しんでいる声。黒い影の中から、その人の手が出てきて、脳髄をつかまれている感覚。精神に何かを飼っているのかと疑った時もあった。







 ――――――――早く思い出さないかね。

 ――――――ねぇ、まだ思い出さないのかい。






 なにを、どうやって、しらないよ、だれなの。声に対する疑問は少なくない。正体不明の声は日に日に大きくなっていく。耳鳴りとして方っておけるならどれだけ幸せだっただろうか。

 放っておけないのなら、そう、私は調べることにした。歴史の時間に、どんな単語に違和感を感じるか。複数あるから、大変そうだ。


 チャイムが鳴って、皆が席についた。

 さ、どれだけ痛みに耐えられるだろう?

 

2013/01/13 文章追加

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