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リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第二章 二つの槍、エレジィゲーム
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神により快楽に酔う、_Ⅲ


 体の中に神様が存在してます。何事か。


 隣に先生がいることを忘れて、頭を抱えて固まってみた。状況は変わらないけど、驚かないのは逆におかしい。

 どうしたんだよ、俺の体。先生が普通に接しているところ、先生はこの状況を知らないだろう。知ってても困るけど。


 何事あって、コレデスカ。

 ――――んーとね、何から話せばいいかなぁ。僕の大好きなリリスがなんか悩んでるところから? それとも、悠馬くんがボコボコのボッコボコにされてるところから? それとも《過去》から《現在》に帰ってきたあたり? というか、なんでいきなり敬語?


 相手が神様だからですよ、その神様や。陽気な口調に、天然まじりな性格。言わなければ、神様とは誰も思わないだろう。

 姿形(すがたかたち)の見えない神様。姿も形もないのが神様にとっての普通なのだろうか。それにしても、奇妙な感覚だ。



「越智くん?」

 声をかけられて、ようやく沈黙が続いていたことに気付く。

「あ、や、もう寝ようかなーって、思って……」



 こんな状況で寝れるか。

 心の中で毒づきながらも、自分がとっさに嘘を付けたことに、表情に出さず驚いた。これは、神様パワーだろうか。違うか。


 先生はあらそうだったの、と言うと、様子が可笑しかったのもあったのか、そそくさ帰って行った。ああ、帰ってくれ。じゃないと、このままでは独り言の多い変人になってしまう。声に出さずとも、先生の相手は出来なくなるし、色々話を聞きながら変な顔をしてしまっても恥ずかしい。


 先生が帰って行ったあと、三秒ほどドアを見つめ、それから、体内にいるらしい神様に問う。


 じゃあ、俺が《過去》に行って帰るところまで。詳しく。

 ――――うげー、詳しく? 面倒くさいなぁ。話さなくていい? パパッと記憶見せちゃっていい? いいよね?


 記憶を見せる。見せるとな。

 頭の中が、何かに吸い取られるような感覚。または絞めつけられる感覚が襲う。思考があやふやなまま、俺は意識を体から引き離された。




 目を開けて入った赤色パレードに、思わず座り込みそうになった。


 ああ、そうだ。これが、俺の見た《過去》だ。

 今の自分と同じように、右目にぐるぐる包帯を巻いた忍足秋名に、血に染まって笑っているアイツ。そして、無表情に観察するように突っ立っているのが忍足秋名。こっちが、《過去》の部分。


 真っ暗な空間の中、見えないイスに縛り付けられているように浮かんでいるまま、目の前に画面として見える《過去》。

 画面の左側を見る。

 ぴくりとも動かない、泣いている表情のままの忍足秋名。倒れて血塗れの俺。血塗れバットを片手に、妖しく見える忍足夏名の顔。


 俺を殴りやがったのはお前か。


 画面の中の忍足夏名を睨む。前々から嫌いだったが、《過去》で殴りまくって、背骨やら腕やら折りやがったのは、コイツ。

 でも、なんでだ?

 日頃皮肉を言いまくってるし、喧嘩も売り続けているが、そんなこと、忍足夏名は気にしないだろう。いつもさりげなくスルーして、すまし顔でやり返してくるのが、忍足夏名だ。こんな堂々と暴行するか?


 忍足秋名が前のめりに倒れて、驚愕の表情で見つめている。


 ショックだろう。あの二人、付き合ってたんだろうから。だからと言って、庇ってやる義理などないが。むしろ学校側に殺されかけたと言いつける。ただの暴行で退学にはならないだろうが、殺人未遂ときたら愛神中学校の品に関する。退学になるだろう。ハッキリ言っていい気味だ。


 忍足秋名が何かを言おうとした時、画面をかき消すかのように、光が降ってくる。

 場面は変わり、どこの室内は分からない《過去》から、病院に戻った。




 治療室には誰も来ていない。俺と、神様である一柱だけが存在している。


 目を開けて少したつと、自分の体にまた違和感が湧き出てくる。自分がこちらに戻ったと同時に、神様であるアレイル・レートシンスも戻ってきたのだ。―――体内に、だ。

 無表情のまま、陽気な神様に聞く。


 俺、お前と会ってないっす、……ね。

 ――――ああ、あのまま気絶していたからねえ。あ、君が目覚める前に、君とあの女の子をこちらに戻して、病院の前に転がしたのは僕だよ。


 あの女の子、は、きっと忍足秋名だろう。俺のように怪我はないだろうが、ショックもあるし、何より時間を渡ったのだ。相当な疲弊だろう。

 俺はもっと疲弊してるけどな!


 あの、憎き夏の名前の糞野郎は、ドウナリマシタ?

 ――――あの子なら、自力で戻ったよ。なんか神の端くれから直接加護貰ってたみたいだし、気もきかせてみて、ほおっておいたんだけどなぁ。戻ってきちゃったよ。あ、現実に戻ってから死んじゃったけど。


 死んだとな。殺されたんデスカ。それよも自爆デスカ。

 ――――殺されたよ。リリスの加護を貰ってる、あの子に。ええっと、樋代愛佳だよ、確か。あの子が学校で殺してたよ。


 学校。そう言えば、俺は何日寝ていたのだろう。全身傷だらけに、力を使いまくったんだ。一日二日寝ていても、別におかしいことではない。

 寝ていた体を起こす。

 それよりも、アイツが殺したとな。アイツなら平気で殺していそうだけど、哀しんだかな。友達だったのに。俺の仇討かな。それだったら嬉しいな。――って、ん?


 樋代が、リリス・サイナー? 今代の、最高神の、加護の、女王? デスカ?

 ――――そうだよ。リリスが偉く気に入っていてね。思わず妬んじゃうくらい。あと、長い付き合いになるから、敬語無理して使わなくてもいいよ。……それより、本題入っていいかい?


 ふと真剣に、どこか嬉しそうな楽しそうな声。

 今まで陽気な声と口調だったためか、それとも、神様であること再認識したための緊張か、体が固まる。肩が思わず上に上がった。

 って、長い付き合い?


 〝陽〟を司る神――アレイル・レートシンスは楽しそうな声で言った。










 ―――――ゲーム(・・・)、参加しないかい?










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