表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第二章 二つの槍、エレジィゲーム
53/116

女神のようだと誰かが言った_Ⅲ




 目の前の真っ赤に、何も言えなくなった。


 悠馬の力で過去に行くことになった時、秋名は少し震えていた。今までの違和感が取れることに喜びはあるが、また新たに胸を包む不快感が増えたのだ。


 沁みるように入り込んでくる不快感。思わず、眉を顰める。


 正体不明の不快感を抱えたまま、悠馬の力で過去に行った。それまではよかった。だが、その後、過去に着いてからの吐き気と意味悪さに、不快感は増していく。


 目の前には赤。右目に包帯を巻いている自分。

 顔を赤色に染めて狂気に笑っている愛佳。

 何も言わず無表情で立ち尽くしている夏名。


 堪らず吐いてしまうと、また新たな不快感が湧き上がってくる。力を失った膝が床につき、制服のスカートが汚れてく。


 涙が溜まりだした目に映るのは、ひたすら笑い続ける愛佳。


 そう、この時。この時、この部屋で、アタシの人生が変わったと同時に、アタシは愛佳の本性を知ったの。知ってる。覚えてる。忘れたことなんてない。


(――――願いを叶え(・・・・・)てもらったのよ(・・・・・・・)


 神様のような人に。人格が変わったような、狂った親友(・・)に。


 締め付けられる感覚が残る頭を叩いた。おかしい。体が動かない。縛り付けられている。何か、に。膝に力を入れてみるが、やはり動かない。


 不快感が恐怖に変わった。


 何で。こんなことに。過去を見に来たのが、何故か違う過去に来てるし、まず学校でもない。場所は知っている。いつの過去かも知っている。一年前の、自分の部屋。


 小さなうめき声が、隣で聞こえた。


 相変わらず体は絞められていて、振り向こうとしても、力がまったく入らない。何度も何度も聞こえる声に、何かで殴る音。


 なにが、どうなってるの。


 堪えていた涙が頬を伝う。震えさえない自分の体に嫌悪感を抱く。隣ではまだ続く耳障りな音。カラン、という音も聞こえた。


 瞬間、体が自由になった。


 突然のことに体は追いつかなく、前のめりに倒れる。その時見えた、夏名の顔。


 血に濡れた頬。今まで綺麗だと思っていた目は狂気に染まっていて。軽く息を切らしている彼の手には、血塗れのバット。近くに倒れているのは悠馬で、夏名の後ろに誰かいる。

あれ(・・)、だれ)


 倒れたまま、思う。


(違う。あれは違う。アタシが知ってる夏名じゃない。違う。違う、違う。絶対、違う。あれは、なに。なによ、あれ。夏名にそっくり。倒れているのも、なんだが、知ってる気がする。だって、そんなハズない。越智くんじゃないでしょ、あれ)


 狂ってる狂ってる。

 思い浮かぶのは、悠馬の頭をバットで何度も殴る、想像。



 意識が遠くなるのを感じた。

 強制的に眠らされる感覚は、嫌なものではない。この温かさには覚えがあった。




 ―――――――――――――愛佳?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
投票にて相手が決まります→「http://enq-maker.com/eDHyfqt」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ