epilogue_Y.O
教室は朝からざわめいていた。教室だけではない、学校中が朝からさわがしい。まるで文化祭当日か
と思うほどに、周りには笑顔しかない。
その理由を、この学校でしらないものはいなかった。そもそも、俺の席があると言う時点で、それは決まっている。
今日、転入生が来るらしい。
二人とも、女らしい。
しかも、美少女らしい。
それでもって、神の目と純血の二人らしい。
その内の一人は、俺の隣の席に来るらしく、クラスはそわそわしている。勿論、俺も例外じゃない。
満面の笑みの担任が、転入生を呼ぶ。
皆の期待が中、ソイツは堂々と胸を張って、不敵な笑みを浮かべて入ってきた。
ソイツは、美少女なんて言葉でおさまるような容姿ではなく、至高の美貌だ。
黄色の混じった橙色の髪は、膝裏まであって、今結んでいるポニーテールを下すと、ギリギリ地面につかないくらいの長さがある。サラサラ、というよりツヤツヤ、のほうが正しいと思う。薄ら桃色のついた頬、形のいい唇は不敵に歪められている。
そして、それら全てを引き立て役にした金色の目。
全てを魅せられる目に、まるで神様のようだと誰かが言った。
神の目を持つソイツは、本物の神様に思えた。
「初めまして。陰東都中学校から来た、樋代 愛佳だ。よろしく」
凛とした声でそう言った。
皆が聞き惚れるその声が、何故か堪らなく愛しく思える。
自己紹介が終わって、視線の中笑っているソイツが、俺の隣の席に座った。
「やぁ、お隣さん。これからよろしく。名前は?」
出された手に握るのは躊躇われた。
おずおずと握った手は暖かさに包まれていて。
「俺は、俺は――越智悠馬。よろしくな!」
笑った顔は、明らかに赤かっただろう。
それでも、ソイツは――樋代は、笑い返して、何も言わなかった。
これが、英雄であるリリス・サイナーとのファーストコンタクト。




