女王のゲーム_Ⅱ
目が覚めると、そこは小さな公園だった。
ブランコとジャングルジムと砂場だけしかない、小さな公園。
その公園には見覚えがあった。
どこで、いつ、見たのかあるいは行ったのかは覚えていなかったが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――ダウト。
嘘だ。いやと言うほどに知っている。誰よりも、本当に、吐き気がするほどに知っている。忘れるはずがない。僕にとっての、忌むべき場所。
その公園には、二人の少女がいた。
一人は、橙色の髪を持つ、実に愛らしい少女。
もう一人は、ツインテールに猫目の少女。
誰に言うまでもなく、聞かせるまでもなく、〝私〟とチルハだった。
その空間では、空間と言う背景はなく、明晰夢と言うよりも全身で映像を見せられているようだった。
チルハは、泣いていた。
まだ幼く愛らしい顔を歪めて、大泣きしている。
〝私〟は、死にかけていた。
頭を包丁で切り裂かれ、そのすぐ後には息を引き取っていた。
二人の近くに、もう一人女が現れる。
まだ純潔と言われていない、セカイが世界だった頃。まだ、世界が虚無でなかった頃。まだ、世界がチキュウだった頃の、長い長い黒髪を垂らして、前髪でほとんど見えない顔を、目を、口を、醜く歪ませている。
「あいか、あいか。あいかあいかあいかぁ、あいかぁ、」
泣きじゃくるチルハに、包丁を持ったその女が近づいていく。
そう、確かその時――。
神が、リリスが舞い降りたのは、その時だった。
その神は、〝白〟で埋め尽くされていた。
白い髪。地べたにつくほど長く、動くたびに空気と戯れている。
白い服、純白のドレス。白い靴に、首には白いリボン。まるで首輪のように、枷のように結ばれていた。
そして、――金に輝く、眼。
神は囁いた。まるで悪魔の甘い蜜のように。
「助けて、やろうか」
神は笑った。無邪気に、どこかつまらなそうに。
「自分の名前と願いを言え。言った瞬間、その願いは叶えられるだろう」
そして、チルハは全てを吐き出すように、叫び、懇願した。
「わたしの名前は、赤尾散葉。お願いだ! ××××××!」
願いを言った瞬間に、神は驚いた。
そして、その場所は消え去った。
願いは、叶えられた――――。




