越智悠馬というヒト科についての記述_Ⅲ
そんなある日、アイツが倒れて、保健室から教室に返ってきたとき。わざとらしく大丈夫か、と聞いた時だった。アイツは、普通に返事をした後、俺に誰だと聞いてきた。ショックだ。名前を教えてないことを教えてくれたが、今までの俺にとっての惨事と苦労は何だったのだろう。これでも、ランキングはあの憎たらしい忍足夏名の次で二位だ。
青ペンを壊した時、これ以上嫌われることしても大丈夫かと思い、酔っぱらいの勢いで忍足夏名に突っかかったのが駄目だったのか。いや、駄目だったのだろう。
それから、サイナーの暴走で入院したり俺がパシリにされたり。
そして、本題を言うと、この前アイツの奇行で仲良くなった、凛音に会った時の帰り道。
なんと、アイツが鼻歌を歌っていたのである。
捻くれた性格のアイツは、機嫌良いなと聞くと、楽しそうな声で、意味不明なことを言い放った。
――――ゲームに勝ったからね。
「ゲーム?」
「そう。ちょっと神と」
「真顔で冗談言うなよ。お前が言うと冗談に聞こえねーし」
「ふふふ。それより悠馬?」
「ん?」
「僕、一か月後には、ここからいなくなっているかもしれないよ?」
「……………………は? なんで?」
「ゲームに勝ったからだよ」
なんなんだ。俺をからかってるんだろうか。
帰り道。部活の先輩である蜜音さんが樋代の兄であることを知り、叫んだ。
その後ろで歪に笑っている樋代の顔を、俺は見ていない。
そして、一か月後。
――――――――――――――――――――――アイツは、死んだ。
長さバラバラでさーせん。




