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リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第一章 少女の転生、神のゲーム
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越智悠馬というヒト科についての記述_Ⅱ




 初めてアイツと話したのは、英語の時間で隣の席と英文を読みあうことになった時。

 最初は嬉しい気持ちもあったが、少し不甲斐ない気持ちもあった。俺は英語が苦手でよくサボっていたため、アイツの綺麗な発音には勝てる気がしない。勝とうと思う方がおかしいのだ。


 始めは下段上段どちらを読むか、から始まり。

 話の流れは発音や読み方を聞くことに夢中で。

 最後は頑張れ、との偽物の応援。心中は別だ。


 会話はごく普通のものだが、凛としたあの声でそう言われたら、異様な興奮を覚えた。体の底から滲み出る高揚感。そう言えばこの時名前を言ってなかったようだ。

 一緒に話した英文は、俺のだけ拙いように感じた。


 次に話したのは、確か俺が忘れ物をした時。

 教科書やノートなどの忘れ物の(たぐい)だったら友達にでも借りれるのだが、よりによって一番使う青ペン。実は赤ペンより使う回数の多いそれである筆記用具は、都合よく二つ持ってないのは普通。友達も仲のいい部活の先輩である真桐(まきり)さんと蜜音(みつね)さんも持ってないとなると本当に困りようである。


 あーやべぇ、とここまでやった自分に呆れ気味に呟いた時、細い手が俺の肩を叩いた。誰だよとか思って叩いたやつの方を見るとアイツがいた。うお、と分かりやすく驚く俺に、貸してあげるよ、困っているんじゃないかい。そう言って渡してきた青ペン。ありがとう、と無愛想に言って素直に借りた。


 それまではいい。だが、俺はあろうことかその青ペンを壊してしまったのだ。


 後ろの席の杉村と話していた時、肘が筆箱にあたったのが原因。筆箱のチャックは空いていて中身が出てしまったその中に、アイツに借りた青ペンがあったわけで。不幸なことに、その青ペンは割れてしまった。


 どうよう。動揺。

 あ、やべぇ。青ペンを借りる前より心底動揺した。

 あの、樋代愛佳の。あの、金の目のアイツの。借りた。やべぇ。殺される。俺が。信者どもに。やべぇ。や、俺も信者だけど。どうしよ。


 青ざめて言い訳を考えていると、割れて散らばったペンを拾ったのは、アイツだった。

 瞬間。俺はうざいと思われるくらい謝った。自己紹介の時言っていた言葉を思い出す。潰される。いや、分からない。でも、邪魔するのは潰す。死亡フラグの乱立。周囲の息をのむ視線と殺気。


 別にそれくらいで、そこまで謝らなくてもいいじゃないか。なんだか面倒くさいよ?


 アイツがそう言った時、一気に脱力した。殺気からの解放で、命の恩人でも見るかのようにアイツを見ると、アイツは静かに笑った。少し、嘲笑われている感覚があった。気のせいじゃないだろう。


 まぁそれは置いといて。

 その事件から、何か出来ることはないかと、アイツを見ていた。


 そんな中で、肝の冷えた事件。アイツが授業中に倒れた時だった。ゴトン、と音がして見ると、イスと共に倒れているアイツ。橙色の髪が無造作に広がっていた。意識は既にない。混乱を隠しきれないクラスメイトのざわめきの中に、アイツの傍に寄ったのは忍足秋名だけだった。


 アタシだけじゃ運べるわけないでしょ、ちょっと手伝って。


 隣の席の俺は、そうして巻き込まれた。それは幸運な巻き込まれだったけど。

 それから何回も同じことが起きて、毎回俺と忍足が運ぶ。それの繰り返しが当たり前になっていた。




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