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リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第一章 少女の転生、神のゲーム
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主人公コウタイのお知らせ_Ⅱ



 それから二十分ほどして、三人は分かれた。

 愛佳は満足そうな笑顔で、悠馬は少し名残惜しそうな顔で、――凛音(わたし)は、焦りの表情で。

 わたしの親友だと確信したあの時、体に電流が走ったと言えば過言になるが、痺れとは違う感覚。笑顔の裏に何かを隠している、人形のような、まるでお手本に(・・・・)似せて作った(・・・)ような神秘的な美貌。

 決断は早かった。何より、わたしに後ろを向けと言った時の冗談の言い方はサクラにそっくりで、後ろを向いた後の、背中に文字を書くような動作を、わたしは知っている。

 横断歩道で会った時も、声をかけて来たときも驚いたが、決断した後は考える時間が欲しかった。すぐに帰っては不自然だったため、二十分時間を置いた。それでも、初対面の悠馬の調子の良さと人当たりの良さには驚いたが。断れると思ったが、メールアドレスを聞きだし、また会うことを約束した。

 あとは、覚悟だけ。

 期限はまた一か月丸々ある。やろうと思えば、いつでも勝てる。ゲームに、勝てる。

 望んでいたことなのだが、今は一つ気になることがある。

 彼女が何かを望んで、リリスとゲームをしていることだ。

 リリスとしているゲームの勝利条件は「親友を見つけること」。目的の相手がいないと出来ない、あのゲームの勝利サインと言うことは、ゲームの内容もきっと同じだろう。

 ベッドに腰を下ろす。

 今日はもう十一時だ。大事なことだが、難しいことは明日考えよう。明日も、日曜にあるテレビを見ること以外、用事はないのだから。


 今日もまた、夢物語(おとぎばなし)を、明晰夢(めいせきむ)を、傍観する。




「ねぇ、何してる、の?」

 わたしとサクラが初めて話したのは、小学二年生の頃だった。目の前で、わたしに笑顔で、言葉を選ぶように話しかけているサクラも、身長はそのくらいだ。

 わたしは、泣いていた。

 そう、確か、何か悲しいことがあって、家から飛び出して、行くあてもなく公園に蹲っている状況だった。

 今はもう何で泣いていたのかも、覚えてない。それでも、サクラに会ってからのことは全て覚えている。

 それは、サクラの容姿に見とれていた、ほんの三秒の間に魅せられた目が好きだったから。今でも、全てを覚えている。

 そう優しく声を掛けられた時、わたしは短くこう言ったのだった。

「アンタには関係ない」

 バッサリ、と。

 よく小学二年生の時、そんなに無愛想になっていたのか、自分にも覚えがない。ただ、昔から男っぽいとか、子供らしくないとか言われていた。それを言えば、サクラだって子供らしくなかったのだが。

 サクラは笑顔のまま言った。

「アンタ()うなや無愛想女。泣いとうけん声かけてやったんに何様やっちゅー話やで」

 笑顔のまま、毒を吐いた。

 わたしは、この綺麗な女の子がそんなことを言うなんて予想しなかったため、凄く驚いて、そのあと俯いた。

 急に自分が恥ずかしくなったからだ。

 相手は心配して声をかけてくれたのに、八つ当たりとはいえ相手を怒らせてしまったことに。大人びていたわたしは、そっぽを向き、今の流れを全て無かったことにしようとした。ずっと喋らなければ、相手だってすぐにどこかに行くだろう。今までの無愛想で、経験していたから、決断が早かったから。

 それでも、サクラはどこにも行かなかった。

 わたしの予想を、簡単に裏切ってしまったのである。


「なぁ、(なーに)に泣いとんかて」

「…………」

「何も()わんのはやめぇや。言うまでずっと待っとくばい、うっとーしいなら早めに言えや」

「……………………」

「うち、気ぃ短いんやけんどな」

「………………………………」

「ちょい、そこなおれ」

「……………………………………」


 そこで、ずっと黙っていたわたしにキレたサクラは、わたしの頭を叩いて、顎を掴んで無理矢理上を向かした。

 行き成りの行動に、しばらく動けなくなり、しかし恐怖もあったため、顎を掴んでいるサクラの手を必死に退けようとした。が、まぁ、昔から力があり、わたしでは敵わない。今でも、きっとそうだろう。


キレたら口調が変わる、愛佳ちゃん幼少期。

続きます。


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