Is this a close friend?_Ⅱ
橙色の髪を揺らし、小首を傾げる。金色の目を少し伏せ、悲しそうに顔を歪めた。肩を下げ、溜息をつくと、それがトドメだった。
「本当に、行ってしまうのかい……?」
「いや、そんな一生の別れみたいに言われても……」いや、僕は一生の別れでも、演技じゃなければこうはならないよ。「――ああ、もう、行けばいいんだろ! 分かったよ、付き合うから!」なんだか、その言葉は誤解を生むよ。
頭をガシガシ掻きながら、満更でもなさそうな顔で言ったのは、越智くん。
周りには微笑ましそうなものを見る目で僕と越智くんを見ている両親。
こうなったのは、先程長い医師の長い話が終わった時に遡る。
少ない荷物(鞄)を病室から持ってくると、ロビーにいる両親と越智くんと合流。その後、越智くんは僕の家に寄っていかないか、と誘われて勿論行く予定だったらしい。満足そうな越智くん笑顔を、僕はそれよりも綺麗で、不機嫌な笑顔で返した。
「ダメ」
「え、」
「ダメだって。君、今から僕と一緒に中央図書館に行くから」
「決定事項かよ!」
「だって君、僕からの誘いって絶対に断らないでしょ」
「まぁそうだけど……」
家行くのが駄目なくらい嫌われてんのかと思った。
そう呟いた越智くんに、僕は心底驚いた。何故越智くんが嫌われなければいけないのだろう。もしかして、僕の理不尽な態度が、嫌われているとマイナスな思考に行かせたのか。
「違うよ越智くん」
「何がだよ」
「僕が君のこと嫌いなんじゃない。――ただ、僕の両親は死んでしまってね」
泣きそうな声で、言った。
「僕の……、殺風景な家を見せたくなかったんだ」
静まり返る空気。目の前で悲しんでいる美しき少女に、どう声をかけようか迷っている表情。そして、その空気の中、彼は少し驚いた顔で言った。
「樋代……」
「………………………………………………………………」
「……取り敢えず、親を殺すな……………………………」
「そうよお、愛佳ちゃん、ママはまだ死んでないわ」「まだ俺は五十代だぞ!」
チッ。
「じゃ、行こうか」
「な、待てよ」
「まだ何か文句あるのかい?」
「文句、じゃ、ねぇけど、」
言いにくそうにしている越智くんに、まったく譲歩しようとしない僕。だって、顔に書いてある。僕のお誘いであっても、折角両親と仲良くなれそうな時に、彼も譲れないのだろう。
一旦、目を逸らす。
僕が諦めたと思ったのか、車に行こうとする両親と越智くんを見た。
橙色の髪を揺らし、小首を傾げる。金色の目を少し伏せ、悲しそうに顔を歪める。肩を下げ、溜息をつくと、それがトドメだった。
「本当に、行ってしまうのかい……?」
そして、話の最初に戻る。




