川島凛音というヒト科についての記述_Ⅱ
その夢物語に最も多く出てきたのは、二人の少女。
一人は、サクラと呼ばれている少女。橙色の髪を持ち、実に愛らしい少女だ。いや、愛らしい、という言葉で済むのはおかしい。絶世の、がつく美少女だった。よく笑い、逆に笑っていない時の方が珍しいくらいの明るい少女。時々アオイとも呼ばれているため、本当はどちらが名前か分からなかった。でも、もう一人の少女に呼ばれているのは、サクラの方だった。
二人目は、チルハを呼ばれている少女。ツインテールに結んでいる猫目の女の子。よくサクラと一緒にいる、もう一人の女の子。いつも竹刀を持っていることと、強気な釣り目は、どこからどう見てもわたしだった。苗字はアカオ。赤尾しかないだろう。
その日の夢――記憶のことなのだが、わたしはそう呼んでいる――は、学校が終わった後帰り道で、明日土曜日だよやったー、と言う話題。
「で、明日。遊べるよね?」
疑問符はついてはいるけど、何故か決定事項として強調されていた。
「ああ。いいよ。明日はどこに集まるんだ?」
少し男らしい、わたしの分身もどきがそう答えた。戸惑いながらも、嬉しそうに笑っていた。
それからわたしは、微笑ましい明晰夢を、手を繋いでいる二人の小さい少女を、忘れかけた笑みを浮かべて、見ていた。
それから、二十分くらいたつと、二人は家に寄ってから近くの公園に向かっていた。サクラがチルハの手を取り、引っ張って走っている。
近くにあった公園は、ブランコとジャングルジムと砂場しか無かった、小さい公園だった。木々に囲まれ、ベンチが一つある。その裏にあった〝それ〟と人影。
それを見た時のサクラの絶望の表情を、わたしは一日たりとも忘れたことは無かった。
冷たいからだが温もりを確保しようと、無意識に布団を引っ張る。
懐かしかった。そして、――悪寒がとまらない。
もし、わたしがあの時、遊べないなんて言っていたら。
もし、わたしがあの時、公園ではなく、別の場所を指定していたら。
もし、わたしが――――
もしもを考えても仕方がない。
悪寒で震える体を無理矢理起こさせ、ベットから出た。
悔いてもしょうがない。
わたしは、その後悔を消し去るために。
そのために、――――わたしは〝転生〟してきたのだから。




