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リリス・サイナーの追憶  作者: Reght(リト)
第一章 少女の転生、神のゲーム
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女神像の前で×××××、_Ⅱ

シリアスがほのぼのに…。


 落書きを指でなぞる。冷たい感触が伝わった。それにしても無駄に勇気のあるやつじゃないか。これだけ信仰されている女神の像に落書きだなんて。しかも油性。

 信者は教師じゃおさまらない。生徒まで、というか世界の人口の五分の四くらいはリリス・サイナーの信者だ。残りもほとんど、リリス・サイナーではないとは言え、他の神を信仰しているだろう。


 政治家が可哀想だ。少し憐れんだ。今の政治家は、神など頼りにならない、世界は人が動かしていかないといけない、と呼びかけているが、〝神の敢行〟が起こってからサイナーの存在もあり、まったく相手にされない。門前払いである。何処が門前だろう。


 肩を叩かれる。振り向くと越智くんが鼻を赤くして立っていた。一月だが、まだ春と言うより冬である。登下校以外でほとんど外には出ないのが普通だ。


「気になんの?」

何を、とは言わない。

「気になるね」

何が、とは言わない。

わざとだ。これで越智くんの顔が赤くなったのは言うまでもない。

「よくこんな勇気あるよね。よりによってリリス・サイナーの像に落書きなんて」

 見つかったら拷問されるんじゃないかな。神聖なリリス像を汚した、愚かなる人間として、ね。まったく、

「馬鹿馬鹿しいよな」

 自分とは違う意味で、越智くんが言った。


 ああ、まったく、本当に馬鹿らしいよ。落書きで大騒ぎ、だなんて。越智くんは落書きして罰せられることに馬鹿馬鹿しいと言っているんだろうけどね。私はその考えさえ馬鹿らしいよ。


 立ち上がって越智くんの隣に並ぶ。罰でも当たるだろうかと思いながら銅像に寄りかかる。一頭身高い越智くんを見ると、鼻と同じように赤くなった手に息を吹きかけていた。寒いだろう。私も寒いさ。だからマフラーを貸すんだ。

 越智くんが首に巻いている黒のマフラーを勝手に取ると、自分の首に巻きつける。「え、あ、」とか「お、おぉ」とか言っている越智くんは総無視決定である。ああ、(ぬく)いよ。


「俺も寒いんだけどなー、樋代」

「知らないよ。君がマフラーを二つ持っていないのが悪いんだ」

「んだよ、それー」


 拗ねたように言っているが、口元が少し緩んでいるため、まったく効果無し。全然動じない愛佳に仕返しとばかりに髪を引っ張っている。どうだ、サラサラしているだろう。そう言うとああ、そうだなと嬉しそうな声が聞こえた。


 彼はとても心の広い人のようだ。一時間目に意識を無くした時、運んでくれたのは越智くんだったらしい、のに。教室に帰ってきて早々失礼なコト(名前を聞いただけで終わればいいけど、半年は隣の席だったのに)聞いた、のに。マフラーを勝手に取ったことにも全然怒らない。まぁ、怒っても返してあげないのが私なのだけれども。


 いつの間にか髪は引っ張られていなく、越智くんの手によってオモチャにされていた。

 秋名と夏名を見ると、みて分かるようにイチャイチャしている。二人がそんなことをすると、美少女が二人仲良いように見える。百合か。私の趣味じゃないのが残念だ。

 どこか歪んでいる心が、この雰囲気を心地良いと認めていた。


 毎日続けばいいな、と柄にもなく思ったのは、初めてと言っても過言ではなかった。



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