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第七巻 花火ポスト

つまらないことで彼女と喧嘩した。「頭冷やして来れば!」という言葉通りに暫く散歩して部屋に戻った。多分こんな男だからダメなのだ。やはり彼女はいない。しかし扉の開いた冷蔵庫の中に見知らぬプリンがあった。「勝手に食べちゃってゴメン」その冷気で頭は冷えたが、心は違った。 #twnovel




あの時こう言っておけば良かった。そんな後悔をシャワーで流せるはずもなく、髪の毛をドライヤーで乾かしている間もずっと、私の眼だけは濡れたままだった。その時、メールの受信を知らせるランプが光った。この時の私はまだ知らなかった。それが涙を乾かすドライヤーになるなんて。 #twnovel




「紫陽花」 アジサイの色は自分だけでは決められない。それは人間が相手によって顔色を変えるのに似ている。案外、アジサイも人間も、どれが本当の色か、なんて悩んでいるかもしれない。でも、きっと大丈夫。アジサイにも人間にも、その名の中に煌々と輝く"太陽"があるのだから。 #twnovel




ヒトは高等生物だ。そんな無知蒙昧を騙る人間がいるらしい。だが真実は違う。ヒトもゴキブリもミジンコも、進化の上では平等だ。なぜなら、大地の上で進化という舞いを今までずっと躍り続けているのだから。真に彼らより劣っているのは、過去に固執して生きている生き物しかいない。 #twnovel




何となく筆が進まないある日、私は強制的にカラオケに参加させられてしまった。時間が減るより、他人の歌の間に考えても文章が浮かばないのが辛い。その時ふと、歌う人達の姿を見た瞬間、書けない理由が分かった。自分もこんな風に、下手かどうかなんて気にせずに書けばいいんだ。 #twnovel




小学生はタンスの上に飛び乗った。秘密基地なのか、ガラクタの山ができていた。「おい、やめろって」通りすがりの高校生としては、最適な判断なはずだ。ところが、そのガキは涙を浮かべていた。「おばあちゃんに会いに行くんだっ! 邪魔するなっ!」「なんだ、肩車要らないのか?」 #twnovel




「短いかなぁ」そう呟く弟が書いているのはお礼文である。何でも、無くしたペンが理科室の自分の所に置いてあったらしい。それを弟は誰かが探してくれたのだと信じているが、俺はそうは思わない。だってそのペンは俺が、誰も使うことのない古い人体模型の中に隠したのだから。 #twnovel




アンカーの俺に二番手でタスキが渡された。すかさずコーチから檄が飛ぶ。「時速1300kmで走れ!」「???」「いいか。今お前は真東に走ってる。だからな、地球の自転に乗っかって今のお前は時速1300kmだ!」"そういうことか"理解した瞬間、この脚は確かに軽くなった。 #twnovel




「よぉ、何で泣いてんだ? 時速1300kmの涙だな」「泣いてなんかないっ! ていうか何で時速1300kmなのよ」「自転速度は赤道上では時速1700km。日本の緯度に直すと大体時速1300kmなんだよ」「だからどうしたのよ!」「そんだけ時間は早く過ぎてくれるのさ」 #twnovel




落ち葉も鳥も人間も、時流という名の大風の中で自在に動くことはできない。そしてそこから逃れることもできない。その姿はまるで風見鶏のようだ。しかし、されるがままではつまらない。そいつに逆らえるのは、生きている奴だけである。さぁ風見鶏よ、風は何処から吹いている? #twnovel




「暑いのは嫌いだよ」「発汗によって体内の水分及び塩分・ミネラルが減少してしまうからな。勿体無い」「いや、そういう意味じゃないって」「ならば団扇で扇ぐ際の無駄なATP消費のことか?」「ふざけないでよ」「何を怒っている? 汗の気化熱で頭を冷やしてきたらどうだ?」 #twnovel




不思議な地球儀を買った。回した分だけ時間が変動するのだ。これで俺は勝ち組になれる。このまま小学生に戻ればテストなんて楽勝だ。早速地球儀を回して……。しかし、次の瞬間俺は中年ホームレスになっていた。何故だ? 太陽は西から昇るから、こう回せば……あれ? 東だっけか? #twnovel




「今日って納豆の日らしいよ」「へぇ~。でも暑いのに納豆はあまり食べたくないな」「そう言うと思って作っておいたよ、特製納豆アイス!」「え!? いや食べないし」「健康に良いよ~」「だったら普通に食べるから」「ほら、ネバネバだよ~」「そんなに粘る理由は何なんですか?」 #twnovel




この町には使われていないポストがある。でも郵便屋の私が見回ると、いつも沢山ゴミが入っているのである。まるでポストが泣いているようだ。そんなある日、ついに私は犯行現場を押さえた、のだが。「ポストさん、た~んとお食べ」子供相手に、ポストも楽しんでいるのかもしれない。 #twnovel




その昔、この地域を天災が襲い、草木が全て枯れてしまった時、とある男が一面を花で埋め尽くしたそうだ。しかし彼は神の怒りに触れて、焼け死んだらしい。今、ついに私はその彼の住居跡を発見し、魔法の秘密を知ることができた。そこには作りかけの打ち上げ花火が遺されていたのだ。 #twnovel




帰り道。足取りは重い。嫌悪なんて感情が無ければ今日はもう少し良かったのにと、私は影に愚痴ってみた。影は車道を歩いて平気な顔をしている。それは花畑でも泥沼でも同じだろう。そこで私ははっとした。嫌悪するから人は歩くべき道を選べるのかもしれない。途端に足が軽くなった。 #twnovel




「もし神様に願いを一つだけ叶えてもらえるなら、何をしたい?」いつもなら、彼女が欲しいとか、好きな仕事に就きたいとか、そんな言葉しか出てこないけれど、今は心の底からこう言えるから、今のうちに叫んでおこう。「私は、神様に直接お礼が言いたい!」 #twnovel




始まりがあれば終わりがある。書き殴った原稿用紙もいつかは土に還り、この140字にも必ず結末がある。しかし形無き物に終わりは無い。物語は語り継がれ、140字の連鎖は世界へと広がっていく。 #twnovel は、これからどんな物語を私達に運んでくれるのだろう? #twnvday




【お】恐る恐る胸に手を当てると 【は】拍動が掌から伝わってくる。 【よ】「よし、今日も生きている」 【う】動きの鈍いこの体を、今日が鼓舞した。 #twnovel




「今日もあなたはいなかった」そんな紙切れが今日も郵便受けに入っていた。これで半年近くになる。差出人の電話番号が書かれているが、私はもうかけたくないし、かけられない。そんな気持ちを伝える手段も、無い。だって知らなかったんだ。その宅配便が、父の釣った魚だったなんて。 #twnovel

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