第五巻 堕落日和
カネ好きの男がいた。彼はカネになる物なら何でも売った。次第に度を越えていき、家を売り、車を売り、友人を売り、家族を売った。服や靴も売った。体も売った。ついには自分の影を売り、色を売った。しかし彼が唯一売らないものがあった。それは、虚しいくらいに分厚い財布である。 #twnovel
ある富豪に気に入られた私は、秘密のコレクション部屋に通された。暗闇の中、富豪が蝋燭の光を透明なケースに近づける。なんとそこには妖しく蠢く"影"が収められていた。実体は無い。「いつ見ても良い影だ」彼は満ち足りた恍惚の表情を浮かべる。どうやら私は感性が足りぬらしい。 #twnovel
「どうしたらみんなと友達になれるかって? 簡単さ。適当に誰かの"色"を買ってきて、その色に染まればいいんだよ。透明人間の心になるのがコツさ。そうすれば誰とでも話せるようになる。実際に、こうして僕は毎日、笑顔で過ごしているだろう?」彼は笑っているつもりらしい。 #twnovel
七色のシャボン玉が浮かぶ世界を落ちていく。そのままにしておきたいのに、綺麗なシャボン玉に限って避けられない。見上げても、あのコスモスのような色は消えていた。空虚を埋めるように、私は叫ぶ。その声は、シャボン玉となって舞い上がった。いつかまた誰かに割られるまで。 #twnovel
Falling into rainbow-colored bubbles. Disappeared cosmos colors. To fill the space, I scream. That became bubbles. Rising, rising, #twnovel