第三十七巻 嘘の作法
或る二人組の物語。
僕はロボットであることを隠して生きてきた。そうすることでしか生きていくことができなかった。もしバレたら、僕はすぐに当局に連行されて、問答無用でスクラップにされてしまうだろう。いつの間にか僕は、嘘をつくのが上手くなっていた。ロボットは嘘をつけないはずなのにね。 #twnovel
オレは、天性の詐欺師と呼ばれた男だった。だがある時、同業者の罠にはまって公安に追われ、このロボット達のスラム街に辿り着いた。ここの奴らは働き口のない旧式だから、嘘がつけないらしい。優しい奴らばかりで腹が立つ。ついでに、嘘をつくことを忘れちまったオレにも腹が立つ。 #twnovel
「お前、ロボットだろ」道ですれ違った男が、僕を睨む。僕がロボットだとバレてはまずい。「勘違いですよ」「じゃあ公安に連絡しよう」「……分かりました。言うことを聞きましょう」「なら仕事を手伝ってくれ」男は楽しそうに微笑む。「嘘つきロボット君でも、詐欺は初めてかな?」 #twnovel
「ビビってんのか?」自称・詐欺師の男の言葉に、僕は背筋を伸ばした。「そんなことないですよ」「ま、何事も穏便にやるに限る。見てればいいさ」詐欺師は、マフィアの事務所のドアをノックする。男が顔を出すや否や、詐欺師は銃口を突きつけた。「どうも詐欺師です。お金下さいな」 #twnovel
詐欺まがいの強盗からの帰り道、ロボット君は不満そうだった。「もう僕も共犯者ですからね。次は僕にやらせて下さい。嘘だけは得意ですから」「やっと本音が出たな」オレは彼の頭を小突く。「特技を仕事で活かしてくれる分には大歓迎だ。でも、もう大事な奴には嘘つくんじゃねぇぞ」 #twnovel
嘘をつかずとも。