第三十六巻 復元師の誇り
或る復元師は物語る。
発掘されたロボットの復元作業が完了した。確認のために起動すると、彼女の声がモニターに出た。「ここは?」「博物惑星の研究室だよ。君が眠ってから、もう数千年は経っている」彼女は無言で、両方の掌をじっと見つめた。報告によれば、彼女は遺体を抱えた状態で発見されたらしい。 #twnovel
マニュアルというのは画期的な発明だと思う。「あなたは生きることを選びますか?それとも再び眠りますか?」発掘されたロボットに向かって、俺は決められた文句を読み上げた。勝手に復元される気持ちを、俺は直視したくなかった。でも彼女は躊躇わなかった。「私は、生きたいです」 #twnovel
彼女の意志は、鉄のように固かった。俺が復元したロボットである彼女は、俺の弟子になりたいらしい。発掘されたロボットの復元が、そんなに魅力的だろうか。「なぜやりたい?」「ある人を復元したいのです。これは、その第一歩です」そのガラスの瞳は、透き通るように美しかった。 #twnovel
俺は古い図面に目を凝らす。「ここの配線が書いてあるのと違うんだよなぁ」情報が乏しい旧式ロボットの復元は、骨が折れる。「このコードなら、こっちに繋がるのではないですか?」「なるほど。そうしてみてくれ」すっかり頼もしくなった弟子の背中を、俺は静かに見守っている。 #twnovel
今日も、発掘されたロボットが一体、俺の作業部屋に運び込まれてきた。慎重に回路を確認してみると、かつて復元したロボットと同じ型のようだった。そのロボットは、現在、脳科学を学んでいるらしい。俺も負けてはいられない。ふぅと息を吐いてから、油塗れの手でドライバーを回す。 #twnovel
マニュアルの上には、埃が似合う。
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