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第三十二巻 欠けた魂たちの叫び

或る喫茶店にて。

旅の途中、私たちは路地裏で見つけた喫茶店で一息つくことにした。「いらっしゃいませ」若い男性店員がにこやかに出迎える。二人共、エスプレッソを注文した。「今日は安心して珈琲が飲めるわ」「どうしてです、お客様?」「私の連れが淹れるコーヒーは、たまにお塩が入ってるので」 #twnovel




汚れたジャケットの男が来店した。顔は赤く、酒臭い。「酒をくれ」「喫茶店にお酒はございません」「俺は何でも見てきた探険家だぜ。クジラだって空を飛ぶんだ。喫茶店でも酒くらい出せるだろ」そこで名案が閃いた。「では、ひとまずこちらをどうぞ」お塩たっぷり珈琲、召し上がれ。 #twnovel




私は喫茶店のカウンターへ目をやる。酔い潰れたのか、そこで男が寝ていた。その顔は新聞で見たことがある。空を飛ぶクジラを発見した探険家だ。だがそれは過去の話。この放蕩生活が、全てを物語っている。「まるで現実から逃げている誰かさんみたい」そんな囁きが聞こえた気がした。 #twnovel




目を覚ますと、そこは喫茶店のカウンターだった。「あなた、有名な探険家ですよね?」声の主は、若い貴婦人だった。侍女と二人で旅の途中、という風情である。「落ちぶれた探険家に何か用か?」「でも、まだ探険家を名乗るんですね?」その視線は、真っ直ぐに俺の心を捉えている。 #twnovel




偶然訪れた喫茶店で、偶然出会った貴婦人に、俺は叶うはずのない夢の話をする。「密林の奥深くに、巨大な竜が棲んでいるという伝説がある。探険家として、俺はそれを確かめずに死にたくない。だがそんな力量もない」すると貴婦人が立ち上がった。「では行きましょうか。夢の国へ」 #twnovel

欠けた魂は、誰かと共鳴できることの証明。


Linked with:

第二章 第十五巻 空を飛ぶクジラ

第二章 第十六巻 つながっていく物語

第二章 第二十九巻 鳥籠に囚われたカナリア

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