第二十八巻 美術教師はロボットにつき
或る美術室にて。
「そこは絵筆を寝かせて下さい」言う通りにすると、良い線が描けた。先生のアドバイスは的確だ。正確無比で、精密で、最適だ。なぜなら先生はロボットだからだ。先生は口癖のように言う。「名画も全ては細かいピクセルの塊です。パターンさえ分かれば、絵なんて造作もありません」 #twnovel
その日、美術の授業に現れたロボット先生は、全身スプレー塗れだった。「新しいファッションですか?」「いえ。昨晩、壁に落書きをしている若者たちに注意した結果です。私、お風呂入れないので」「それは災難でしたね」「ええ。筋が良いので、せっかくアドバイスをしたのですが」 #twnovel
「変ですねぇ」ロボット先生は、絵を描きながら独り言を呟いていた。「どうしました?」「最近、色使いが偏ってしまって。レファレンスデータにエラーがあるのかも」そこで美術室に英語の先生が入ってきた。彼と話すロボット先生から、湯気が出ているのが見える。これは恋ですねぇ。 #twnovel
朝一番に美術室へ向かう。「先生。頼まれてたお土産です」「ありがとう。早速、見てもいいですか?」ロボット先生は、デジカメのメモリーカードを読み込む。先生には生徒を守る機能が無い。だから写真でしか修学旅行を知らない。喜んでくれるかな。私は、先生の顔をそっと覗く。 #twnovel
放課後。美術室へ入った私を、ロボット先生は問い詰めた。「いじめられてるって、本当?」ついにばれたか。私は白状する。「でも私は別に気にしてないですから」しかし先生は首を横に振った。「そこに座って」静かな部屋の中で、絵しか能のない口下手な先生が、丁寧に筆を走らせる。 #twnovel
ロボットにだって、絵は描けるのだから。