第二十七巻 僕とロボットの漂流記
それは、漂流する筏の上の日常。
「僕はいつから航海をしているのだろう」海に浮かぶ筏の上で僕は呟いた。相棒が答える。「後悔はいつものことです」「違う、船に乗る方の航海だ。お前、壊れてるんじゃね?」「そのポンコツロボットに作り方を教わって、筏で海に出たのは誰ですか?」「それについては後悔してるよ」 #twnovel
大海原に揺れる、ちっぽけな筏。それだけが、僕らの体を支えている。「僕ら、このまま死ぬのかな」「死ぬのはあなただけです。私はロボットですから」「そういやそうか。いいなー、僕もロボットになりたい」「無駄口叩いてないで、お魚釣って下さい。あなたの晩飯ですよ」「ヘーイ」 #twnovel
「居眠りしてると、筏から海に落ちますよ」ロボットの相棒の声で、僕は目を覚ました。「変な夢を見てた。空を飛ぶクジラの背中に乗って、陸地まで帰る夢」「それは良かったですね」「そう言えば、ロボットは夢を見ないんだっけ?」「私の夢は、あなたのお役に立つことだけです」 #twnovel
「しりとりをしよう」ロボットの相棒は怪訝な顔をした。「なんでまた」「漂流生活には、気晴らしも必要では?」「暇なんですね。いいですよ」「じゃあ、しりとりの『り』で、『リンゴ』」「ごちそう」「ウマ」「満漢全席」「……やめようよ、そういうの」「私、お腹減りませんし」 #twnovel
彼の寝息を聞きながら、夜空を眺める。私はロボットだから、夜は物思いに耽る時間だ。私たちが漂流してから随分と経った。彼がいつまで生きられるかは分からない。だから彼の望みは何でも聞いてあげたいと思う。おや、彼が寝言を言っているようだ。「ハンバーグ」それは無理です。 #twnovel
お腹が減るのは、生きている証。
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第二章 第十五巻 空を飛ぶクジラ