第二十六巻 地縛霊さんの文化祭について
地縛霊さん的「文化祭の歩き方」。
文化祭は一大イベントである。だって校舎の中は、非日常でいっぱいなのだから。いつもは気だるそうな生徒たちも、今日は活き活きとしている。そしてそれは、地縛霊である私も同じ。私は毎年必ず一番初めに行くと決めているところがある。いくらでもイタズラし放題の、お化け屋敷だ。 #twnovel
体育館のステージでは、合唱部がコンサートを開いていた。私は、文化祭の人混みを"すり抜けて"合唱部の列の端に加わる。地縛霊の私に気付く人なんていない。そこで私は一年間の鬱憤をこめて、よく知らない曲を大声で歌う。やっぱり大勢の観客の前で歌うのは、最高に気持ちがいい。 #twnovel
廊下には、クレープ屋とか焼きそば屋とかの看板が並んでいた。でも食べ物系は、地縛霊の私には無意味である。そんなのには脇目もふらずに、私は自主制作の映画を上映している教室へと急ぐ。何せ映画なんて滅多に見れない。どんなに下手な映画でも、私にとっては大ヒット作なのだ。 #twnovel
文化祭に展示されている美術部の絵を眺めながら、絵の勉強をしておけば良かったと後悔した。だって地縛霊の私でも生きている人と同じように鑑賞できるからだ。ふと隅の油絵に目が留まる。直感的に好きな絵だ。傍にいる子の絵だろうか。こういう時、感想を伝えられないのが残念だよ。 #twnovel
文化祭で賑わう学内を、かつての同級生の彼が教師として見回っていた。その彼の横で、地縛霊の私は文化祭でやったことを話す。当然、彼に私の声は聞こえていない。でも、どうせ聞いてくれる人なんていないのだ。だったら聞いて欲しい人のすぐ隣で喋る方が、ずっとマシだと思わない? #twnovel
お祭り騒ぎの後の、なんとも言えない静けさが好き。
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第二章 第二十四巻 地縛霊さんの学校生活について