第二十五巻 壊れた僕らは夢を見る
或るロボットの廃棄場にて。
「壊れたロボットが夢を見たっていいじゃねぇか」と彼は言う。彼は介護用ロボだった。だが肥満の人間を運ぼうとして両腕を失い、この廃棄場にやって来た。「夢ってどんな?」「医者になって、壊れたロボがまた働けるようにするんだ」「ふーん。でも僕はもう掃除機ロボはゴメンだな」 #twnovel
「なんで泥棒って駄目なんだ?」泥棒ロボは、銀貨を拾い上げて背負った袋に入れる。銀貨は、袋に開いた穴から落ちた。「それが悪というものだ」警官ロボは、壊れた手錠を泥棒ロボの両手にあてがう。「逮捕って難しいな」「泥棒も難しいぜ」廃棄場で出会った二人は、いつも一緒だ。 #twnovel
私はバイオリニスト。バイオリンを弾くのが好き。でも右腕が動かなくなって、廃棄された。だってロボットだから。だけど廃棄場のみんなが、私の右足に弓をつけてくれた。下手っぴだけど、久しぶりにバイオリンを弾くことができた。私はバイオリニスト。バイオリンを弾くのが好き。 #twnovel
僕はひなたぼっこをしていた。僕ら壊れたロボットが住むこの廃棄場も、昼間は静かだ。なぜならアイツに見つかるから。アイツはまだ動いているロボットを破壊しにやって来る。だから早く充電を終わりにしたいのだが、最近効率が悪い。でも太陽の光を浴びながら死ねるなら幸せかもね。 #twnovel
「こんなの拾ったんだけど」「それは古いカメラだね」「なんだ、使えないな。僕らは壊れたロボットだけど、記憶なんて忘れないし」「カメラは記録以外にも使えるよ」「?」「思い出を写真という形に残せるのさ。よし。みんなを呼んで、我らポンコツの集合写真でも撮ろうじゃないか」 #twnovel
僕らは壊れているから夢を見るのかもしれない。
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第二章 第二十三巻 狂生し、共生し、
※三つ目のついのべについて。ツイッター上では「弓」を「弦」としていましたが、正しくは「弓」です。この場で訂正させて頂きます。