第二十三巻 狂生し、共生し、
狂気は手に余る。
樫の木の下でギターを弾く青年。静かに涙を流すような音色が、草原の向こうから聞こえてくる。当時幼かった私は、近付くこともできぬまま、そっとその調べに耳を傾けたのだった。後になって、その年は流行り病で死人が多かったことを知った。多分、私は彼に助けられたのだろう。 #twnovel
いつからだろう。ギターを手に取ると悲しい音色を弾くようになったのは。気付くと両手は血塗れになっている。でもそれは、僕の血じゃない。僕がギターで生きていこうとして、ギターで殺してきた人達の血だ。もしそれを拭えるのなら、僕は指から血が出るまで悲しい曲を弾き続けよう。 #twnovel
こんなものは有機物でできた機械なのさ。遺伝子でプログラムされていて、歯車はタンパク質。だから、いくら首をはねたところで心を動かす必要なんざない。「そんなことを言い聞かせて、何をするつもりだい?」振り返るとそこには、まだ純粋だった頃の自分がこちらを見ている。 #twnovel
郊外のスクラップ工場。ここには各地から廃棄されたロボットの残骸が運ばれてくる。まだ”生きている”ロボットを完全なスクラップにするのが、僕の仕事だ。彼らを介錯する時、僕は必ず「じゃあ、またどこかで」と心の中で告げる。再び彼らを思い出すまで生きることを、誓うのだ。 #twnovel
ふと気付くと俺はスクラップ工場にいた。回収されてから随分年月が経っていたらしい。もはや俺の有機アンドロイドとしての機能は無いに等しかった。そこに男が現れた。俺めがけてバールを振り上げるのが見える。その顔には見覚えがあった。「君は、あの時のギターの音色を覚え――」 #twnovel
狂った歯車の音を知っているかい?
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第二章 第二十五巻 壊れた僕らは夢を見る