表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/67

第三巻 日陰運命

「診察」 看護師は刀を手にした。皆、それを黙って傍観するしかできない。彼女は、前線の野戦病院にいる以上、戦わなければ俺達患者を助けられないと考えたのだろう。「では往診へ行ってきますね」その時には、俺はこめかみに銃を当て、引き金を引いていた。 #daihitsu #twnovel




「象徴」 横断歩道の縞が、きっちりと綺麗に並んでいる。それを眺めて、その象徴する意味みたいなものを考えていた。そこに作業員のオジサンたちが通りがかって、そのうちの一人が横断歩道を指差した。「何だコレ」「どした?」「曲がってるじゃねぇか。俺だったらやり直させるよ」 #twnovel




I used a pencil found in a way through the math test. Today teacher says, "I've got you wrong." Artistic pictures were my answer. #twnovel




「A DAY」 オフィスチェアーに座りながら、天井を仰ぐ。両足で勢いをつけ、時計回りに回ってみる。景色が逆さまになって、戻って、そうして何度も回転する。まるで自分が地球の自転軸にいるかのような錯覚に陥る。そこで自分に問う。「お前の毎日は、こんなもんか?」 #twnovel




「価値」 会計で一円玉を取り出すと、レジ打ちのバイトの眼が一瞬だけ嫌そうになった。汚れがひどい一円玉だったからだ。これでも一円の価値が保障されていることを、無意識に妬んでいるのかもしれない。こいつが一円の価値を守り続けて来た半世紀は一体何だったのだろう。 #twnovel




「慈善」 久し振りに日本へ帰って来ると、「悪い奴はココ」という矢印の看板があちこちに立てられていた。最近流行りの「匿名の慈善活動」ってやつらしい。おかげで街中の落書きやゴミがそこへ故意に集められ、街は綺麗になった。人々は失っていた笑顔を取り戻した。あぁ、汚い。 #twnovel




「本望」 ある友人が自殺したと連絡があった。苦労の末に大成し、先月子供が生まれたばかりだというのに、である。後日、彼の遺書が見つかった。そこにはこう書かれていたそうだ。「いつ再び不幸がやってくるとも知れません。だったら幸せの絶頂にいる今のうちに、死んでおきます」 #twnovel




「月」 綺麗な満月が、俺の帰り路を照らしている。「どうだい? これで通りやすいかい? ちゃんと見ていてあげるよ。独りは寂しいからね」なんて声が聞こえてきそうだ。もしそうだったら、俺はこう言ってやる。「あいにくだけど、表の顔ばかりで裏の顔を見せない奴は嫌いだよ」 #twnovel




「茹人」 野菜と肉を鍋につっこんで、茹でる。ふと、まだ心を躍らせていた入学式が昨日のように思い出される。そう言えば、あと少しで院の入試か、と鍋の中で踊る彼らを見ながら気付く。スープの素の袋に書いてある茹で時間はとっくに過ぎているが、湯からあげる気は、まだ無い。 #twnovel




「日陰」 私は運命を恨んでいる。なぜ日陰に咲く花なんかに生まれてしまったのだろう。そう愚痴ると、アリはこう言った。「日向にいる花なんか、どれだけ多く光を得るかしか考えてない。日陰にいるから、光が欲しいなぁ、って思えるんですよ。それって嬉しいじゃないですか」 #twnovel




「運命」 「あなたの運命、かえませんか?」俺はそう訴えた。「宗教はちょっと」「いえ、その良い運命を売って下さいと言ってるんです」真剣に懇願する俺の前で、彼は一言こう答えた。「運命に良し悪しなんて無いですよ。他人のは良さそうに見えますが、実際そうでもないですから」 #twnovel




「発掘」 「あ」新聞の小さな記事が、俺を呟かせた。また新種の恐竜が発見されたらしい。ただの会社員の記憶の隅の小さい頃の憧れが”発掘”される。ふと記事の下に目が行く。「化石発掘ボランティア募集中」何かが変わる訳じゃないけれど、問合せ先を頭の中で復唱する自分がいる。 #twnovel




「埋蔵金」 作業の手を止めて、縁側に腰を下ろした。昔の体力はもう無いなと実感する。庭ではポチが穴を掘っていた。「婆さん、ポチが埋蔵金を掘り当てるかもしれんぞ」なんて言っていると、穴からお菓子の缶が姿を現した。途端に記憶が蘇る。「そうだ、通帳は庭に隠したんだった」 #twnovel




「報せ」 NASAの会見が一斉生放送されている。ついに異星人からのメッセージが解読されたからだ。それが英語で読み上げられた途端、会見場は凍りついた。「一体何があったんだ?」遅れて、それは通訳された。「【重要】本ゲームをご利用のユーザーの皆様へお知らせです。……」 #twnovel




「図鑑」 私には最高の宝物がある。それは、色々な人生が書かれた図鑑だ。失敗の愚痴とか、自分の居場所を探していることとか、誰にも言えない不安とかっていう、普段の生活では、隠されてしまって知ることのできない人生でも、そこに載っている。その図鑑の名は「タイムライン」。 #twnovel




「破壊者」 よく当たる占い師がいるらしい。友人もそれを真に受けている。だから俺はその占い師へ言ってやった。「あんたは何人の希望を台無しにしたんだ?」「何と失礼な。むしろ希望を与えているじゃないか」「未来が分かってたら、生きていく喜びなんて無いに等しいだろう?」 #twnovel




「勝ち」 「楽しく生きた奴の勝ちだ」それが親父の口癖であり、最期の言葉だった、らしい。俺は死に目に会えなかったのだ。葬儀ではあちこちでどっと笑いが起こる。最後に顔でも拝んでやるか……あれ? 潤んだ視界の向こうで、親父は白い歯を見せながら、口元に人差し指を当てた。 #twnovel




「相棒」 「俺の身にもなってくれ。毎日夜遅くまで付き合わされて、無理してんだぜ? まだ続くなんてゴメンだから、頑張ってくれよな」シャーペンも、コイツなりに気遣ってくれているらしい。そして試験は始まった。そうそう、大学で最初のノートの担当はお前だから覚悟しとけよ。 #twnovel




「消去」 過去を消せる消しゴムが発売された。友達も家族も、皆がそれを使って赤点や失敗や失恋を消した。そのおかげで、暗い顔をする人はいなくなった。そしてとうとう使っていないのは僕一人になった。でも僕は唯一消せないものがあることを知っている。誰もそれに気付かない。 #twnovel




「封印」 過去を消せる消しゴムを、俺は極秘に発明した。全ての失敗を消すと”天才”と呼ばれるようになったが、一人だけ相変わらず俺を名前で呼ぶ奴がいた。ある日その理由を尋ねてみた。「だって、陰で努力してるんでしょ?」その後すぐ、俺は消しゴムをゴミ箱に投げ入れた。 #twnovel

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ