第八巻 宇宙氷晶 ―ソラユキ―
目の前に浮かぶ宇宙船の破片が問いかける。「お前はなぜ生きたい?」俺は答えずに操縦桿を引く。エアージェットで救命艇は方向を変え、ギリギリで衝突を回避した。初めは死んでしまってもいいと思っていた。でも今、俺は救命艇を操縦している。アンドロイドの彼女を後ろに乗せて。 #twnovel
地球時間で15498日が経過した。墜落した救命艇も、御主人様の亡骸も、あの時から変わらない光景だ。あと、この雪も。この星では、岩肌に開いた穴から火山性ガスによって雪が舞い出すのだ。唯一違うのは私のバッテリーの残量だけ。ねぇ、いつか私達も宇宙の向こうに帰れるかな? #twnovel
我々調査団の予測は的中した。この惑星の地中には、莫大な量の水が眠っている。水資源が不足した人類にとって貴重な資源惑星となるだろう。だが俺は見つけてしまった。この星特有の雪が噴出する岩穴の傍に、矢尻が落ちていたのだ。もし知的生命体がいるのなら、この星は誰のものだ? #twnovel
会議は終わり、議長が宣言を始めた。「我々調査団は、この星に知的生命体が存在しないことを確認した。よって――」そこに艦内放送が鳴った。「紳士淑女諸君。さようなら」その瞬間、会議場は爆風に飲み込まれた。ああ、君か。いいぞ、もっとやれ!無力さに甘んじた我らも焼き殺せ! #twnovel
「こちらの展示品は、この博物惑星ミューズの建設時に発見された、近世の救命艇です。同乗していたアンドロイドの記憶データから、この搭乗者はかつて水資源調査団として派遣された科学者であり、本惑星の先住民族を保護する目的で調査団の船を爆破していたことが判明しました」 #twnovel
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第一章 第十六巻 舞雪は宇宙の彼方へ
第二章 第十二巻 機械人形の心
第二章 第十五巻 空を飛ぶクジラ
第二章 第十六巻 つながっていく物語
第二章 第十七巻 姿なき声の届く先