第五巻 未熟な私の抱きしめ方
今日は自由研究の発表会。ぼくの右の席の子は、メダカを海水で飼う実験をしていた。でもお父さんが失敗を許さないから、海水と言って川の水を使ったみたい。左の子は、メダカの生息地の環境悪化を調べていた。川が汚れてるっていうけど、東京の川を調べたらそうなるだろって思った。 #twnovel
子供の頃、僕は寝転びながら天井に向かって手を伸ばすのが癖だった。指先が天井に触れそうで触れないもどかしさを心に刻みつけて、あと一歩を踏み出す糧にしていたのだ。でもいつからそれをやめたのだろう。僕はコロニーの窓から、未だ訪れたことのない青い惑星へ手を伸ばす。 #twnovel
愛犬ココアは悪戯好きだ。今日も帰宅すると部屋の中は散らかし放題。犯人はリビングで尻尾を振っておすわりしていた。その前にはドッグフードが注がれた傘立て。その上には色とりどりの洋服がトッピングされている。そうか。私の好きなパフェを作って、誕生日を祝ってくれたんだね。 #twnovel
ボクは空を飛ぶのが夢だった。アリさんから聞いた話では、チョウチョさんは羽があるから空を飛べるらしい。じゃあボクらは無理だね、と笑いあったのが懐かしい。風まかせの旅だけれど、ボクはタンポポの綿毛であることに感謝している。この気持ち、空の向こうまで届けられるかな。 #twnovel
「こんな精巧なフィギュア、よく作れるね」造形作家の友人は笑って答える。「そのフィギュアの背中を見てみなよ。少し雑だろ?でもそこまで作ってたら、他に作りたいものも作れないのさ。そんなところにケチをつけてくる奴は、たいてい自分が完璧にできると思ってるから要注意だぜ」 #twnovel