第四巻 スカルプチュアの呼吸
「吸血鬼なんて美しくないね」映画を観終わった後で、彼はそう言った。「どうして?」「生き物は、無駄がないから美しいのさ。吸血鬼の口は血を吸うには向かない。蚊とか蝶を参考にすべきだよ」「そうかな」本物は接吻で命を吸うんだよ。そう教えたら、彼に嫌われてしまうだろうか。 #twnovel
「外国の脅威が目の前にあるのに『戦争反対!』って言う人ってさ、自分の力で働いて食っていかなきゃならないのに、就活がうまくいかないのを企業のせいにして、怠惰な生活を頑なに変えようとしない大学生のようなものだよね」「子供を人質にして要求する点では、もう立派な悪党さ」 #twnovel
ある日から世界各地で、人間が突如石化する現象が起き始めた。原因究明のために調査隊が組織されたが、私だけが生き残った。一人になってどれだけ経っただろう。ついに右腕が石化し始めたところで、私は悟った。これはきっと、自分の限界を規定した者から脱落していくゲームなのだ。 #twnovel
久しぶりに親友と会ったのは、高い塀の内側だった。「刑務官とはお前らしい仕事だな」「君も相変わらずだ」「俺はな、世界という彫刻を心に従って削ってんのさ。お前だって同じだろう? それが正しい世界の彫り方だ」手錠を外して逃げ出した死刑囚の後ろ姿を、僕は静かに見送った。 #twnovel
火星の砂漠の上で後悔をしても、もう遅い。彼女と喧嘩して「お前の顔なんて二度と見たくない」と言い放ったのが一時間前。今、俺は宇宙艇が停めてあったはずの空間を一人で見つめていた。"Am I left high and dry on the red planet?" #twnovel