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第一巻 盲目タイマー

「会話」 隣の会話が耳に入る。「クレーム処理って大変でしょ?」「確かにね。でも面白いこともあるよ。こないだなんか『いつもクレーム処理お疲れ様です』っていう人がいてさ。最後には『酷く怒鳴られた、って報告しといてくれればいいから』って。感動しちゃった」思わず足を組み直してしまった。





「Trick」 奴を眠らせ仕掛けにセット。玄関が開くと作動して、あたかも自分で首を吊ったようになる。完全犯罪は成った。あとは宅配便が来る時に仕事場にいればアリバイが成立し、自殺となる。心の中でガッツポーズを取った、その時だった。奴のよくしつけられた飼い猫が、玄関から出て来たのは。





「自転車」 ペダルを思い切り踏みつける。この風を斬る感覚が好きだ。でも通勤中のオジサンの鈍い自転車が、前を塞いでいる。道が細く、なかなか追い越せない。でも一瞬、隙ができた。もちろん速攻アクセル全開。車道側から回り込む。と、視界には白黒の車。甲高い笛の音が、早朝の空気を震わせた。





「昇降機」 エレベーターのドアが閉まる。独り溜息が漏れる。やりたいことをやるか? それとも現実を見るか? 親に面倒見させてこのザマじゃあ、バカ息子もいいところだ。そこでドアの注意書きが目に入る。「触れるな危険」……バカならバカをやり通さなきゃ、バカじゃねえよな。ドアは冷たかった。





「再還流」 道の向こうにボロ服の男がいる。「ああやってゴミ拾って生活してるのって、偉いのか、はしたないのか」「何言ってんだ。集めてんのはさ、リサイクルできるゴミなんだぜ。それを集めてる奴はリサイクルされるに決まってんだろ」朝刊の一面を見て、三年前のそんな何気ない会話を思い出した。





「泥棒」 あと少し……! カチャ。侵入成功っ! さて、今日の獲物は……「コラ!」ヤベッ! 振り向くと、男が玄関に仁王立ち。もうダメだ。「ちゃんとドア閉めとかないとバレるだろうが。それから、靴なんか脱いでないで金庫探せ」「あ、はい。すみません」へ? だ、誰!? てか、カッケえなぁ。





「隣」 「どんな時でも待っててくれてさ、落ち込む俺を励ましてくれる人が居てくれたらな」そうツイートして、携帯を閉じた。早くバスが来ないだろうか。夜に独りバス停に立つのが、すっかり日課になった。特にこの季節はキーを打つ指先がかじかむ。そこでふと、街灯がちらついた。灯台もと暗し、か。





「兎」 「わ~、赤い眼可愛い」「これはアルビノって言って、生まれつき色素が無いんだ。だから血の色が透けて赤く見えるんだよ。言わば変わり者さ」『誰が変わり者だって? クソッ、このケージさえ無ければ!』だが、女の何気ない呟きに考え直した。「ふ~ん。でも兎は兎でしょ?」#twnovel





「タイマー」 「タイマー、鳴ってるぞ」「お、でっきたっかな~っ」そう言って、友人はカップ麺のフタを開ける。眼鏡が曇る。しかし電子音を止めようとしない。「おい、『早く止めろ』って言ってるぜ?」「『俺のことなんか構うな』って言ってんだよ。それがコイツの仕事だろ?」 #twnovel





「盲目」 電車はトンネルに入った。隣の青年二人は青臭い話をし出した。「今の日本って将来真っ暗だよなぁ。俺ら大丈夫かなぁ」「大丈夫だろ。ホラ、地下の生物って目が退化してるだろ? それと同じで光があっても気付けないんだよ、きっと」いつの間にか、窓の外は青空だった。 #twnovel





「小巨人」 信号が点滅する。横断歩道を駆け抜ける。大地を感じたのは久しぶりだ。そういや神話には地球を支える巨人の話があったよな。でも、だとしたら巨人と惑星一つを足した、もっと重いそれを、誰が受け止めているのだろう? 「お前の仲間か?」ちょうど靴紐がほどけていた。#twnovel





「歯ブラシ」 朝、ちょうど俺が顔を洗おうとした時だ。「ちょっと、使い終わった歯ブラシ捨てるなんてもったいないよ。掃除に使えるんだから」「でもそれって可哀そうじゃない?」「そうかな。『第二の人生』があるワケでしょ? それって捨てられるよりずっと良いと思わない?」 #twnovel





「魚骨」 「こないだ魚の骨がノドに刺さっちゃってさ~。これだから魚は嫌いなんだ」「ハハハ、それは君が食べ物を尊んでいないからだね」「言い古された説教だな。そんなの死語だぜ? 信じるだけ無駄だよ」「ホラ、やっぱり分かってない。それが釣られた魚の気持ちなんだよ?」 #twnovel





「見世物」 夕陽が差し込む電車の中に高校生達の会話が響く。「ねぇ、○○って芸人いつ消えると思う?」「そんな話されてる時点で、もう消えたも同然だろ」こんな会話で芸人は消えて行くのか。でも、俺はそんな一時の笑い話にもなれずに消えて行くのだ。中吊り広告は今日も揺れる。





「鬼」 ついに完成した。それが何かを判別するロボットだ。「あれは何だ?」「あれはTVです」ちょうど芸能人の謝罪会見を取り上げている。「じゃあそこに映ってるのは?」「あれは人に見える鬼です」もちろん、本当に謝ってるんですかね、なんて言ってるコメンテーターのことだ。 #twnovel





「レジ」 レジ打ちのバイトを始めて3カ月くらい経ったある日。『あれ?』商品にバーコードが付いていない。「すみません。値段を確認してきます」「いえ、あの……」誰かと思えば、よく見かける女の子だ。「それ、あなたに」そう言えば、最近チョコレートがよく売れていたっけか。 #twnovel





「レジ2」 「レジ打ちのバイトしてたらチョコ貰ったって? そんなのあり得ないだろ」思わず、そんなTwitter小説を書いた作者に文句を言いたくなってくる。そんなんで貰えるなら、誰も苦労しないのだ。『あれ?』バーコードが無い!……ってバラ売りのタマネギじゃねぇか! #twnovel





「宝物」 「いや〜、無くした手袋が落とし物窓口に届いてて良かったよ。昨日は特に寒くて、感覚が麻痺しちゃってヤバかったんだ。やっぱり大切な物って無くしてから気付くもんだね」「おいおい。一度でも無くしちゃいけない物だってあるだろ? 拾い主にお礼言えてないじゃないか」 #twnovel





「静かなる嘘」 ある日、道に猫のストラップが落ちていた。「危ないぜ」見えるようにガードレールの上に置いてやった。翌日、そこの近くの喫茶店で彼女と待ち合わせていたら、その窓辺でご主人を探すそいつがいた。「拾ってくれた人に感謝しなきゃね」言い出せるはずがなかった。 #twnovel





「懺悔」 悪友にメールを送ろうと電話帳を開く。そいつの下に、中学以来会っていない女子がいる。俺に本命のチョコを渡した唯一の女子だ。返事をできない自分がまだそこにいる。両想いかもしれなかった女子との淡い関係だって、その子と彼女の親しい関係だって、もう終わったのに。 #twnovel

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