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第十二巻 糸電話の妖精

ある国の遠征軍が未知の国へ踏み入れた。「将軍。この国の住人は考えることを知らぬようです。まるで機械のように動きます」「それなら奴隷にしよう。良い使用人になるぞ」「いえ。それは無理でしょう」「なぜだ?」「他人の猿真似しかできないのです」結局、征服は後回しとなった。 #twnovel




ドーナツが転がっていた。それも1個や2個の騒ぎではない。100、いや1000の単位で山の斜面を流れていた。それに気付いた街の人々は歓喜の声を上げながら走っていってしまった。だがあれは悪魔の悪戯だ。今頃彼らは気付くはずである。そのドーナツがあまりにも巨大なことに。 #twnovel




やっと見つけた。小さな花の上にちょこんと座っている。そう、妖精だ。妖精が振りまく光る粉は長寿の薬。それを僕は病弱な妹のために持って帰らねばならない。僕は虫取り網を構えた。だが気付かれていたらしい。ふと見遣ると網の中に小瓶がある。それは僕にはひときわ輝いて見えた。 #twnovel




「君がバイトの子かい? さ、こちらに」おじさんに促されて向かったのは小高い丘の上だった。「これが仕事場さ」そこには発掘されて姿を現した遺跡の姿が。思わず息を呑む。「感動するだろ? 何も無い所に魂が眠ってるみたいで」「いえ。むしろ生の中にある死に、心が震えました」 #twnovel




実は、雲の上には小人が棲んでいる。彼らは体重が軽いから、雲の上で生活できるのだ。しかし近年飛行機が問題になっている。住処を荒らされないように、隠れなければならないのだ。だが悪いことばかりでもない。離れ離れになった雲の間に、飛行機雲が架け橋となってくれるからだ。 #twnovel




僕は呪われているに違いない。おとといは授業中に鉛筆を折り、昨日は体育で脚の骨を折ってしまった。一体どれだけ折れば気が済むのだろう。そんな風に落ち込んで心も折れかかっていた、そんな時。病室をノックする音がした。「お見舞いだよ~。クラスのみんなで千羽鶴折ったんだ!」 #twnovel




写真は一枚の中に集約された情景が心を動かす。それが私は好きだった。そんな今日は散歩中に見つけた猫にズームする。こっちを向いて、それとなく警戒心を漂わせている姿。これが良い。そう思った時だった。「ニャア」その何かを悟ったような声が忘れられず、今もカメラを握れない。 #twnovel




首相が盗まれて一週間が経った。討論番組でもその話をやっている。「そもそも首相をスーパーコンピューターにすることが間違ってたんだ」「いや、それは別に良いじゃないですか。だって実際、景気は良いし政治混乱もない。それより問題は総理のクラウド化を渋った国会にあると……」 #twnovel




その知り合いはヘッドホンを耳につけていた。「何を聴いてたの?」「何も聴いてないよ」「???……耳当ての代わりとか?」「いや、違うって」「分かった! 耳栓の代わりか」「そうじゃない」「じゃあ何でつけてたの?」「だから『何も聴いてないよ』っていう曲を聴いてたんだよ」 #twnovel




「『すれ違い通信』って知ってる?」「知ってるよ。俺は持ってないけど」「え、結構持ってる人いるの?」「クラスでも10人以上はいるよ」「それヤバくない?」「いや、普通でしょ。ていうか何か誤解してない?」「『すれ違い通信』って、うちの担任のブログの名前なんだけど……」 #twnovel




糸電話が降ってきた。見れば糸はすうっと天まで伸びている。一旦は躊躇したが、好奇心が疼く。「もしもし」こもった声が振動になる。すぐに返事がきた。「もしもし」それからしばらく、時間を忘れるような一時を過ごした。「ところでお名前は?」「私は時間泥棒と申します」 #twnovel




もしスプーンがこの世から無くなったら、カレーはどうやって食べようか。インドでは手で食べる。でも日本の宗教観ではない。やはりレンゲか。だがあれはスプーンがルーツだから反則だろう。とにかく、今言うべきはただ一つ。「スプーン取ってくるの忘れちゃったから、先に食べてて」 #twnovel




「今日もいい朝ですね」カーテンを開けた向こうで咲いている野花に話しかけてみる。その花は何も喋らない。「今日も空気がおいしいですね」自転車で走りながら、青空を流れる雲に投げかける。その雲は何も喋らない。それでいい。僕が待っているのは、これから会う友の声なのだから。 #twnovel




体が浮いた。風船のように、風に足を取られながら。とにかく地上へ戻らなければ。もがく。だが手応えはない。もうダメだ。「元に戻してくれ」「それはできません。望みを叶えるのは一回だけですから。それにしても、こんな辛い思いをしている風船に、どうしてなりたがるのですか?」 #twnovel




あと少しリードを守って、この長い坂を登りきればいい。その時だ。坂の上から何かが転がっていった。一瞬迷ったが、先に体が動いてしまう。向きを変え、急いで坂を降りた。転がるそれを拾った時には、もう諦めていた。だが掴んだ物を見て驚いた。「マラソン式入社試験 内定通知」 #twnovel




ついに、感情に合わせて自動で声に色がつくようになった。嘘をついても信用を無くすだけの、誰もが素直になれる時代が到来したのだ。「ちょっと、そこの兄ちゃん。安くしとくよ!」その声に嘘の色は無い。「声の色を偽装できるアプリだ。欲しいだろ?」「……お高いんですね?」 #twnovel




何年かぶりに母校へ来た。こんな放浪の写真家にも帰巣本能はあるのだと感心する。ふと校庭から教室を見上げると、居眠りしている生徒がいた。思わずカメラを向けると、そこに見えたのは何故か自分だった。あぁ、思い出した。俺は写真家になることを親に反対されて、あの窓から……。 #twnovel




窓から紙飛行機を飛ばす、のなら分かる。だがてるてる坊主は聞いたことがない。でもジャックされた放送室の窓から、それが次々に飛ばされていた。「明日の文化祭は絶対晴れ! 全員野外ステージで私の歌を聴きなさい!」そのステージが、てるてる坊主で埋まっているとも知らずに。 #twnovel




ふとした出来事で植物は歩くようになった。根を脚にして、のっそり陽の当たる場所へ移動するのだ。こうなると背が小さいと不利そうだが、実はそうでもない。大きい樹の上に登ればいいのだ。やがてそこから滑空することを覚え、植物は空にも進出するだろう。この世に、不可能はない。 #twnovel




困った。シャーペンの芯が無くなってしまったのだ。いや、正確には中に吸い込まれているようである。そこで中を見てみると、奥の方に黒い塊が詰まっていた。「ブラックホールだ」それに気付いた瞬間、俺は吸い込まれて目が覚めた。芯が無くなって諦めた問題は、なぜか消えていた。 #twnovel

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