第7話 「姫様はコンビニに行くそうです」
「何なのだこれは!?何なのだこれはーー!?」
マンション3階のエレベーターに乗って1分、公道に出てから更に3分。
トータル5分弱なその位置にあるのは、コンビニ大手チェーン『セイジ・イーブン』だ。
『賢者すら』驚く品揃えなんて店のキャッチフレーズの様に、ここにくれば食品・生活用品、雑貨、が一通り揃う。
スーパーや書店に行けばもっと安く買えるが、数十円の為に時間を使うのも馬鹿らしい。
そんな理由から俺の生活拠点になっている訳だが……、姫様の興奮が収まらない。
「イナト!何なのだこの店は!?自動で開くドア!天高く積まれた商品!謎の機械!商店のジャンルがまず分からぬ!!」
「業種はコンビニ。簡単に言うと何でも屋だ」
「なんでもだと!?うむ、あれは本か……、正気の沙汰とは思えぬぞ!!」
「そこまで変か?」
「本は紙だぞ、食品の近くに置いたら湿気で悪くなってしまうではないか!」
本を作る文化はあれど、大量に印刷する技術は無いのか。
コンビニに売っているような本は大抵は雑誌、呼んだらゴミになる使い捨て。
それを教えたらもっと驚きそうだが、今じゃないな。
「とりあえず、ぐるっと一周するか。商品に触るなよ」
「承知したのだ!」
不審者扱いされないように考えた苦肉の策、それは、ルートルインを徹底的に子供扱いすることだ。
せがまれて買い物に連れて来た兄……、百歩譲って、叔父でもいい。
とにかく、はしゃぐ子供と面倒臭そうな保護者って関係をアピールしたい。
「イナト!本当に本が売っているぞ!!可愛い女の子が表紙だ!!」
「漫画か。絵本みたいなもんだ」
「欲しいぞ!!」
「ダメだ」
「そうか、ダメか。ダメかぁ……、仕方がない」
そういいながら、名残惜しそうに漫画を見つめるルートルイン。
残念ながら、その漫画を今買うことは無い。
「それは11巻、前の巻を持ってないのに買ってどうする」
「続きものなのか!」
「そのうち買ってやるから、今日は食いもんを優先するぞ」
「うむ!楽しみなのだ!!」
ふぅ、危ない危ない。
書籍コーナーを進んでいくと青年誌コーナーになり、ちょっとアレ表紙が並んでいる。
初めての異世界ショッピングを楽しむ姫様にエ●雑誌を見せつけるとか、どんなプレイだよ。
そんなん、超速攻で通報されるわ。
「この列にあるのが菓子類、左側がレトルト食品、ガラスケースはアイスな」
「菓子は分かる。レトルト食品とは何だ?」
思案顔で見上げてくるルートルイン、早くも興味がレトルト食品に移ったらしい。
ビーフシチューのパッケージを凝視し、「美味そうなのだ」と呟いている。
「長期保存用の食品だよ、温めるだけで食える」
「そんな便利なものが!?でもシチューだぞ、5日くらいは保つのか!?」
「まぁ、その位だと思うよな。……1年から2年」
「……は?」
「最低でも2~3か月は保つぞ、もちろん、味はそのままだ」
「し、信じられん……。でも」
何かに気が付いたルートルインを促してみると、周囲をキョロキョロ。
あれも、これも、それも……、と何かを確認し、目をぱちくりさせている。
「流石は異世界。思っていた以上なのだ」
「何がだ?」
「技術力だ。私の国では、このように同じ商品が少量ずつ並ぶ事はあり得ない。大量に作られた既製品か、一点物のどちらかだ」
「なるほど、製品を手作りしているから、効率重視になる訳だ」
「うむ。菓子の袋に絵が描いてあるのも信じられん。額縁に入れて飾るレベルの美しさだぞ!」
ポテチの袋を鑑賞しようとした奴、初めて見た。
確かにデザイナーが作ったんだろうけどさ。




