第4話 「姫様はユーチューバー」
「ゆーちゅーばー?」
「似たような文化がこっちにも有……、いや、配信業が盛んな異世界って何!?」
なんだこの面白姫様、ネタの宝庫じゃねぇか!?
ユーチューバー、もしくはVチューバーは、もはや日本文化の中心と言っても過言ではない。
有名配信者が食レポした商品は即日完売、遊んだゲームはミリオンヒット。
漫画に、映画に、ドラマに、アニメ……、SNSと合わせた二大流行システムの片割れが異世界で流行っているだと?
「ツッコミ所が湯水のごとく湧き出してくるが……、配信業が流行るほどの技術があるんだな?」
「こちらと比べると文明としては僅差で、機械工学のみを比べれば絶望的に負けている。個人で所有できる冷蔵庫があるとは驚いたぞ!」
「普及している魔法で機械工学の差を埋めているってことか?」
「うむ。映像配信は光魔法の応用だな。目に映る映像は光の集合体である訳だが、それを一度魔力化し、任意の場所で再構築。この形態変化こそが汎用魔法の基礎だ」
そう言いながら開いたルートルインの掌の上に、美しい王冠のホログラフィックが浮かび上がった。
それに付け加えられた説明によると、
・全ての物質は、魔力の影響を受けると変化する。
・空気は、光、熱量、力流、粒子を含む混合物であり、そのバランスを変更することで、火や水や風などを生み出せる。
・生物は、形質変換の媒体『魔力』を体から放出している。
・魔法行使の仕組みは、あくまでも変換である為、個人で大規模災害を引き起こすことは出来ない。
「なるほど、魔法をこっちの世界で例えると変換ケーブルや回路……、言葉が通じるのも同じ理屈か?」
「それは私の個別魔法の効果だから、もっと複雑だぞ」
「もう一種類あるとか言ってたな?簡単でいいから説明してくれ」
「簡単にか。そうだな……」
・体外に放出している魔力の波形は個人によって異なり、それぞれに特化した魔法がある。
・多くは汎用魔法と同じ物質の変換であり、その条件を限定することで変換効率を良くしたもの。
例)酸素+熱→広域爆炎 のように、汎用性は失われるが、及ぼせる効果は大きくなる。
・これらは個別拡張魔法とも呼ばれ、国民の大多数が該当する。
「上手いこと汎用魔法と組み合わせる事で、高い殺傷能力を発揮したりもできるが……、時代錯誤だ。戦争が起こっていたのは70年も前のことだぞ」
「さらっとヤバい事実が出てきた。空気から爆発物作り放題とか怖すぎる」
「そうか?その窓から、こちらの世界を眺めてみたんだが……、尋常ではない超ド級兵器が大地を走っていたぞ!?青くて巨大な蛇みたいな奴!!」
「それ、青い身体に白いラインが入ってたりする?」
「する!なんだあれは!?」
新幹線。
時速300km、日本が世界に誇る高速列車。
「あとで教えてやるが魔法の説明が先な。その口ぶりだと、まだ何かあるだろ?」
「気になるのに……。個別魔法には、どこをどう変換したらそうなるのか理解できない特殊魔法がある。私の『夢旅行』もそうだ」
「夢旅行?」
「個別魔法は危険だからな、当然、研究されている。10歳になると魔力計測を受けて魔法判定を行い、国に登録するのが決まりだ」
「で、その夢旅行で何が出来るんだ?」
「そうだな、こんな感じだぞ」
・夢旅行の所有者は、睡眠の間、別の世界を訪れる。
・そこに出現するのは、異世界にある物質で作った仮初の身体。故に、最低限の生命維持は保障されている。
・眠ると現実の体に戻る。そして、体が残っている限り、睡眠を介して意識の往来ができるようになる。
「体が出来た=生命誕生に必要な物質がある、だから少なからず生き物はいるってことか」
「綺麗な湖のほとりなどは当たりだな。美味しい果実とかあることが多いのだ」
夢の世界で南国バカンスをするようなもんか?
……ちょっと羨ましいかも?
夢なら変なもん食べて、食あたりになることも……、ん?
「へぇ……、五感のある夢で異世界体験……。質問いいか、死んだらどうなるんだ?」
「目が覚めた時、すごく嫌な気持ちになる。たまに吐くぞ!」
「うなされてるじゃねーか!?嫌すぎるだろその魔法」
「まさに悪夢なのだ。訳も分からず死ぬのは良い方で、酷い場合は痛めつけられた上に食われるからな!」
最悪過ぎる。
夢の中で恐竜に襲われるようなもんか。
ということは、この王女様は捕食生物が支配する夢の世界でサバイバルを繰り広げてきた?
そりゃ、冴えない成人男性程度じゃ物怖じしなくなる訳だぜ。
「もう一つデメリットがあってだな」
「まだあるのかよ」
「訪れる先は選べない。そして、今まで100種類以上の世界を訪れてきたが、ここまで文明が発達しているのは初めてなのだ!」
無数にある世界から文明を引き当てる確率って、どれくらいなんだろうな。
確か、観測されている星の数が18億以上って話だったっけ?
まだ宇宙人が見つかっていないなら、1/1800000000……、0.0000000005%の可能性すらある訳だ。
なお、ジャンボ宝くじの一等の当選確率は0.00002%。
……ふっ、36000本、当たっちまうぜ!
「だから何でもするぞ!!絶対に生活基盤を整えて、この世界を堪能し尽くしてやるのだ!!」




