第14話 「メイドさんたちはインタビューを受けるそうです」
「はい!こちら実況のカタリナとーー!」
「解説のサクラコがお送りします!!」
「いやー、姫様たちの蕩ける笑顔。胃も心も温まる光景でしたね!!」
「ルートルイン姫様がご提供なされた『おにぎり』、ホンっトウに美味しそうでした。でも、不思議なことに、事前に頂いている資料とは異なる料理の提供でしたね。これは……、ギオンコロニ王の仕掛けでしょうか?」
「えぇ、おそらくは。もしかすると、直近の控えめな提供も演出だったのかもしれませんね!!」
「おにぎりブーム絶対来ますからね。おっと、タレコミによるとハンドルーラー商会でお米の大規模買い付けが行われたそうです!問屋、卸売り業、生産者に至るまで、在庫は残りあと僅かだとか」
ロイヤルディッシュは午前10時~午後20時までの10時間にも及ぶ長時間配信だ。
故に、姫達の休憩の間、それまでのまとめや視聴者の反応などを発表する番組が差し込まれる。
テンション高めな言論が人気を博している、女性ニュースキャスターの『カタリナ』。
実家が大商会で太い、経済評論家の『サクラコ』。
幼馴染であり仲の良い姉妹のように見える二人は、実家のコネを使いまくり、ロイヤルディッシュ配信のMCを獲得。
ただでさえ煌びやかなロイヤルディッシュを彩る華として、2人を推すファンも多い。
なお、ボーイッシュ少女にしか見えないサクラコは男性である。
「……!?大変ですサクラコ!!」
「どうしたの?」
「どうやら、姫様たちが召し上がっていたおにぎりを、メイドの皆様にも試食して貰うそうですよ!!」
「えっ、いいなぁ」
「……ちょっと、素が出てる。後で後で」
「お米、実家に残ってると良いけど……。え、僕らも試食できる!?ありがとうございます!!」
二人がMCに選ばれた理由の一つに、伯爵令嬢・子息という身分がある。
特に、王城に出入りする大店の跡取り息子であるサクラコは、高位官僚とも交流が深い。
そんな彼らは、ファナティシアに絶対的忠誠を誓っている裏組織の一員だ。
「これがおにぎり。映像で見るのとは違いますねー、匂いがあるので!!」
「ご飯の蒸気は焼き菓子の甘さに近いかもしれません。なお、手元に届いているのはアスパラベーコンと豚の生姜焼きです」
転送魔法にて届けられたおにぎりの包み紙には、簡素なメッセージが添えられている。
『視聴者の購買意欲を煽ってください』
絶対的主人からの施しと命令、それを実行するべく、二人はおにぎりを手に取った。
「おぉ、二つに割ってみましたが……、蒸気に乗って一気に香りが広がりました!!」
「これ、すごいことですよ。想像してみてください。部屋に充満するほどの濃厚な香りが口の中で爆発するんです」
「我慢できませんね!頂いてみましょう。はむっ、んー!!」
「辛っっっ……らいけど……。これ、お酒に合います!!」
二人そろって仕事を忘れた素のリアクション。
未成年者の姫の配信で酒の話題を出すなというディレクターのカンペを見つつも、『主婦層』『成人男性』に狙いを定めて語り出す。
「おにぎり、いいですね!!味の濃い料理なら何でも具材になりそうです!!」
「片手で食べられるのもgoodです!仕事中はもちろん、時間の無い朝、疲れて帰ってきた夜。作り置き出来るおにぎりなら、ピクニックに持って行っても良いでしょう!」
「なるほどー、メイドの皆様にもぴったりですね!」
「休憩の僅かな隙間で食べるには、パンは向いていませんからね。もしも水分を取られて配信中に咳き込んだりしたら、それこそ大失態です」
ロイヤルディッシュのサポートに回るメイドが食事を摂らない理由、それは、パン、スープ、肉料理、焼き菓子……、この世界の料理のことごとくが短時間の食事に向いていないからだ。
喉が渇くパンや焼き菓子は、姫の傍から離れられないメイドにとって致命的。
スープや肉料理は汁気が多く、衣服を汚しでもしたら姫の品格を落としかねない。
そんな理由から、メイド達は主人の為に食事を抜く。
だが、リスクが低い食事があると知ってしまえば、それに飛びつくのは必然だ。
「ということで、メイドの皆様にインタビューをしてみましょう!!」
「スタッフさーん!よろしくお願いします。……えっ!?」
MCに促され、撮影の魔道具を持ったスタッフがメイド達に駆け寄っていく。
ハンドマイクを片手に悪ノリを始めた姫達と一緒に。
※
「おにぎりの感想を言うのだ!!本気の意見を頼むぞ!!」
「ルル様!?えと、とっっっても美味しかったです!生姜焼きだったんですけど、もーとろとろで最高で!!」
「ほうほう、それはそれは!!明日の食事が楽しみで仕方がないな!!」
インタビューを始めた姫が狙うのは、自分のメイド。
それぞれがイタズラを思いついた悪ガキのような笑みで、自分が食べていないおにぎりを持つ者に声を掛ける。
*
「美味しそうね?何のおにぎりを食べたのかしら?」
「ベーコンペッパーです。素晴らしく美味なのですが、レイミス様にはちょっと辛すぎるかもしれません」
「お子様扱いしないでよ!!」
筆頭メイドに話しかけたレイミス。
そして、彼女を実妹のように溺愛しているメイドは、ペッパーに負けて涙目になるかもしれない主人を憂いた。
*
「ん、シャケは僕もまだ食べてない。どう?」
「チーズとは違う濃厚な隠し味……、もしかして、こちらがマヨでしょうか?」
「え”っっ。マヨ使ってるとか聞いてない。あ~~ん」
博士号を持つメイドは躊躇なく口を開けたライラを眺め、一秒。
インタビューではなく味見が目的だと理解し、持っていたおにぎりを主人の口に差し込んだ。
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「あのう、そちらのおにぎりは……?」
「生姜焼きであります!めちゃウマっすけど85点、唐辛子チョイ足しで完璧になるかと!!」
「ふふっ、王帥に食べて頂くときはそうしましょう」
リリカルは仲の良いメイド将官に話しかけ、感想どころか、アレンジ方法まで提案された。
グルメな彼女が気に入った以上、アルアグレン軍国の兵糧として、生姜焼きおにぎりと唐辛子が登録されるのは決定事項だ。
*
「メイドの皆様も満面の笑顔ですっ、尊い!!」
「この美味しさですからねー。これは調理方法の発表が待ち遠しいでしょう!」
「えぇ、えぇ、もう本当に!!という所で、そろそろルートルイン姫様のランチ、第二部が始まります!!」
「次はどんなおにぎりが登場するのか、わくわくですね!!」
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