第13話 「姫様たちはリクエストに応じるようです」
※何故か、レイミスが生姜焼きおにぎりを食べてたので23時40分修正しました!
「んん……まーーい!!なんだこのおにぎりは!?」
「これがマヨ。調味料界の絶対君臨者。マヨ教条主義と僕は呼ぶ」
「はわぁ~~すごく濃ゆいですぅ。癖になりそうですぅ~~」
「……。」
ルートルイン、ライラ、リリカルがオーロラエビマヨおにぎりを堪能している光景を、銀シャケバターおにぎりを持っているレイミスが眺めている。
「コクがあると言いますか……、確かにお酢の感じはするんですけど、すごっくまろやかって言うかぁ」
「な!な!美味いよな!?」
「マヨが合うのは……、ご飯だけじゃない。パンとも相性が良いはず。なんなら、芋や野菜につけるだけで超美味」
「……。」
和気あいあいとマヨを語る友達を横目に、レイミスは自分の銀シャケバターソースおにぎりをパクリ。
口の中に広がるシャケの塩味と、バターの濃厚な甘み。
それは非常に美味しく、オーロラエビマヨと比べても差があるとは思えない。
「……ねぇ」
「ルートルイン、マヨ単体を売って。法王に任せてたら3日は掛かる。待てない」
「ウチも欲しいですぅ。あ、その出来ればでいいのですが……」
「マヨは作り立てが美味しい。後でこっそりレシピを教えるから、そっちでうまくやって欲しいのだ」
衣装に付けられているマイクを手早くOFFにし、ルートルイン、ライラ、リリカルが身を寄せ合う。
視聴者どころか、自国の王にも秘密な約束を交わそうと、三人は潜めた声で密談を交わしているのだ。
それは、勝者故の孤独。
一人だけ違うおにぎりを食べているレイミスだけが、ポツンと取り残されている。
「ねぇちょっと!!すっごく疎外感を感じるんだけど、ねぇってば!!」
「あ。すまぬすまぬ。つい」
「レイミスはレシピいらない?」
「王帥が購入してくれるとは思いますが……、補給経路に保険を掛けておくのは兵法の基本ですぅ」
レイミスは自身の個別魔法『思念摂取』で、既にマヨのレシピを理解している。
だが、ここで断るのは不自然。
そもそも、これ以上の疎外感を感じてなるものかと、レシピの購入を快諾した。
「それにしても……、まだ4種類も別のおにぎりが残っているのよね?」
「うむ!どんなものが出てくるか見当もつかないがな!!」
「それってどうなのよ!?あん……、あなたのランチでしょうが!!」
「ワクワクしながら待つのも醍醐味だろう!さて、ここで10分の休憩を挟むとしよう。国民のみんなも、どんなおにぎりが出てくるか予想しておくのだぞ!!」
誰もが憧れる姫である彼女達は、煌びやかな姿のみを魅せる存在でなければならない。
故に、配信中の離席は好ましくない。
ましてや食事中に席を立つなど、配信者以前のマナー違反だ。
そんな理由から、ロイヤルディッシュではこまめに休憩が差し込まれる。
タイミングは取り仕切っている姫によって判断され、今回は10分の休憩が宣言された。
「ファナティ、指にソースが付いてしまったようだ。手を洗いに行ってくるぞ」
可愛らしい立ち振る舞いで椅子から降り、隣接の化粧室へ向かって歩き出す。
当然のことながら、茶室・化粧室・衣装室などの警備は万全。
そもそもここはギオンコロニ城。
姫が護衛無しで行動しても身の危険を感じることは無い。
「あ、そうだ。せっかくのおにぎりが冷めてしまっては勿体ない。食べていいぞ!!」
「つっ!?ルートルイン姫様のお心遣いに感謝いたします」
ルートルインと一緒に化粧室に向かっていた三人の姫が、驚愕に染まった顔で振り向いた。
「「「え?ずるくない?」」」と心を一つにしつつ、ルートルインの筆頭メイドならしょうがないと諦める。
「ルートルイン姫様、並びに、レイミス姫様、リリカル姫様、ライラ姫様。もしよろしければ、おにぎりの味見をここに居らっしゃるメイドの皆様にしていただくのはどうでしょう?」
ルートルインの筆頭メイドであるファナティシアは文武ともに最高水準。
研究者と弁論を交わし、兵士を蹂躙する彼女にとって、殺気を感じ取るなど当たり前だ。
撮影の魔道具の裏に立つ、修羅のごとき殺気を放つ鬼の形相な老紳士。
……キザラさま、国王陛下への報告を忘れてますね。忠告はしたはずですが。
その男が、大混乱真っ最中であろう国王の筆頭執事であることを知っているファナティシアは危機を回避するため、周囲を道ずれにしようと画策した。
「え……、どうしようかしら?」
「むぅ。ずるい。人生で初めてメイドになりたいと思うレベル」
「でもでも、食事抜きは大変って聞きますし……、おにぎりなら手軽なので……」
三人の姫の視線に、「食べたいです!」とアイコンタクトで返答するメイド一同。
姫それぞれに思うことがあるも、必死の訴えをしているのは大切にしている側近。
後でおにぎりの感想を聞くのも面白いかと、最終的には納得する。
「うむ!不公平にならない様に分けるのだぞ!!」
「ありがとうございます。ではさっそく」
制限時間は残り9分。
それではおにぎりを楽しむには心許ないと、ファナティシアは企画責任者に声を掛けた。
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