第3話 「幼女は王女であるそうです」
「鴨田 稲人 (かもだ・いなと)、男、一人暮らしの社会人」
「終わりか?もうちょっとなんか欲しいぞ」
「なんかって……。特になんもねぇよ」
普通ならここで趣味とか言うのかもしれない。
だが、俺には人に語れるほどの趣味なんかない。
普通の毎日を繰り返す俺の相棒は、ケータイとタブレットだ。
気まぐれにゲームをしたり、漫画を読んだり。
音楽やニュースを見たり聞いたり、たまに調べ物をしたり。
一つのことに熱中することが無い……、あ、コンビニ弁当を食べ比べるのは好き。
「本当に枯れてる人生を送っているのだな。すまん配慮が足りなかった」
「ガチで謝るな。普通に凹む」
「その代わり、私の身の上話はネタが豊富だぞ。なにせ王女だからな!」
なんだその自信たっぷりなドヤ顔は?
ネタが豊富な王女様って、地雷臭が半端じゃないぞ。
「私の名は、ルートルイン・ファス・ギオンコロニ。ギオンコロニ帝国の第一王女の『ルートルイン』という意味だ」
「ミドルネームがあるとか、いかにも王族って感じだな」
「重要なことなのだぞ。特に貴族の女はな」
「どういうことだ?」
「歴史的背景として、女性の身分が軽んじられている時代があったのだ。主導権は男にあり、女は尽くしていればよい。とな」
男有利の政治経済は、俺達の世界にもあった思想だ。
メリット・デメリット両方あるとは思うが……、個人的には好きな考え方じゃない。
もしかしてそれが原因か?
この王女様が『何でもするメイドになる』とか言い出したのは?
「だが、とある王が自分の妻を着飾り、周囲の貴族に自慢しまくったことで、流れが変わった」
「ん?」
「これでもかという程に煌びやかな妃を侍らせた国王が、『お前らは自分の女を仕立て上げることすら出来ない程、貧しいのか。顔も悪けりゃ財力も雑魚とは情けない。ぷぷww』と周囲を煽りまくったのだ」
「暴動が起きないか?それ」
「そりゃあもう、大臣、大公、公爵、伯爵、貴族界総出でマジギレ祭りじゃ!」
「でしょうね」
「だが、王はカリスマの塊だった。吹き上がる廃位の声を制御し、『財とは力の指数だ。惚れた女を着飾れる者こそが、真の貴族なのだ』という思想を作り上げ、己の権力を誇る為の場として、茶会や夜会を推奨した」
中世ヨーロッパみたいな感じか?
力が強く、安定した体調である男が支配権力を握り、女性は弱い立場に置かれる。
どこの世界も同じようなことを考えるようだが……、語り手が少女だと悲壮感が無いな?
「そうなったらもう、女を代理にした経済戦争勃発なのだ!男は妻や娘を誇ることでマウントを取ろうとする、そしてそれを効率よく行うために、とある賢者が映像配信を始めた」
「……ん?」
「お茶会の様子を記録し、城下の広場で公開したのだ。映し出されているのは、家の威信を賭けた美女ばかり。自分達とはまるで違う世界に生きている貴族の女に、視聴者達はときめいた」
「……んんー?」
「やがて、女の役割は家格の誇示だけでなく、その個人を推すファン……、通称『ガチ恋勢』の獲得になった。至る所で映像配信が流されることになり、人気貴族が勧めた商品を国民はこぞって買う。そうすることで、流行操作が可能になったのだ」
「うわなんか知ってる!?ユーチューバーだろ、それー!?!?」




