第7話 「ライラ姫は豚肉の生姜焼きをリクエストするようです」
※今回は豚の生姜焼きおにぎりを初めて食べた 『ライラの視点』 である為、彼女の心情で語る一人称で描写しています!
「わたくしのエビマヨと違い、アスパラペッパーベーコンは一つの旨味を突き詰めたおにぎりって事ね?」
「うむ!味が濃い故に、仕事の合間に食べても満足するだろう。そういった意味でも試して欲しい一品だぞ!」
ん、ルートルインのおにぎりも侮りがたい。
僕にまで届くペッパーの痛烈な匂い、ここまで特化しているというのなら、お酒にも合うはず。
というかそもそも、辛めのベーコンペッパーはお酒の当て。
赤白ワインに、ビール、ウィスキーとも相性が良い。じゅるり。
「次は……、ライラとリリカル、どっちが食レポするのだ?」
「僕」
「うむ、豚肉の生姜焼きおにぎり、期待しているぞ、ライラ!!」
うわぁ、ルルがキラキラした目でこっち見てる。
これは本当に楽しみにしている時のもの、ちょっち真面目にやらないと、後で怒られるかも?
おにぎり。
ルルが言っていたように、とんでもない魅力を秘めた究極料理兵器。
剣も、盾も、城も鉄で作られるように、ご飯は料理の基盤として非常に優れた逸材。
しかも、『炊飯』という技術は、どんな書物でも読んだ記憶がない。
まず間違いなく、世界を変える新しい発明。
だから、魔法の技術体系が解明された直後の世界のように、扱いを間違えると鮮血の川が出来上がりそう。
なお、主な成分は小麦農家の血涙。
「ルートルイン。僕の言葉は難解だとよく言われる。だから、分かりやすい食レポをする為に、とても大きな問題を解決しなければならない」
「大きな問題、だと……?」
「とても由々しき事態。レイミスにも関係があること」
「え、わたくしも?そりゃ……一緒に配信してるんだから無関係って訳にはいかないでしょうけど。……それで?」
「二人の食レポが美味しそうすぎて、僕のおにぎりの味を忘れた。おかわり希望」
「……。」
「……。」
それはありなの?って視線で見られても困る。
1人1種類とは聞いたけど、1個までという条件は無かった。
不測の事態に備えて多めに作ってあるのだから、大人しく提供して欲しい。
「ファナティ、予備はあるか?」
「ございますが……」
ファナティシアが言い淀むなんて珍しい。
なるほど、ロイヤルディッシュが終わった後で味見するつもりだったんだね。
その気持ちはよく分かる。
とてもよく分かる、策謀を仕掛けてしまうくらいに。
「仕方がない、出してやるのだ!」
「かしこまりました」
しぶしぶといった感じに運ばれてきた2個目の豚の生姜焼きおにぎり。
相変わらず美味しそう。
はむぅ。
んーー!
たとえ2個目だとしても、この感動はちっとも薄れない。
ほくほくのご飯から染み出る、豚の油。
しゃくり。しゃくり。と音を立てる玉ねぎ。
未知の調味料マヨとも、尖った味付けのベーコンとも違う、親しみ慣れた味。
なのに……、今までの料理とは根本的に違う、未来の味。
「もぐもぐ……、こくん」
「二つも食べたのだ。さぞかし凄い食レポになっているのだろうな!?」
「豚の生姜焼きおにぎりは……………………、」
「おにぎりは!?」
「……おいしい」
「おぉん?」
「すごく、とても、めちゃくちゃおいしい。みんな食べるべき。以上」
「……。」
「……。」
「……。」
ルートルイン→驚愕。
レイミス→あきれ。
リリカル→困惑。
ふっ、みんなの顔が面白い。
配信映えもバッチリ。
「ライラ、あんたねぇ……!!」
「以上というのは流石に冗談。論理的な解説に入る前に、感情的な感想を言ってみた」
さてと、ここからは真面目にやろう。
2個目を僕の個別魔法に掛けた本気の解説で、ご飯の凄さを世界に広めないと。
大不作した小麦の高騰からの、経済大恐慌。
飢えは略奪を呼び、やがては、本当の意味で血が流れる。
そんな歴史の繰り返しを防ぐ特攻兵器『ご飯』。
それを広めるのは、一応は聖女ってことになってる僕の使命……、ってことにしておこう。




