第8話 「料理人たちは姫の希望を叶えるようです」
「お前ら注目、姫様が御大層なもんを持ってきやがったぜ!!時間がねぇから食いながら聞きやがれ!!」
手早く作った20個のゴマ塩おにぎりを配りつつ、キザラが吠える。
現在の時刻9時1分。
配膳の時間を考慮すれば、ランチの完成まで2時間30分を切っている。
「こいつは特殊な調理をした米だ。この旨さとヤバさが分からねぇ馬鹿舌はここには居ねぇよな?」
「なん……、おいしっ……!!」
「良質の粘りがありますね。弾性が高くて程よく硬い、研究が楽しみです」
「それだけじゃないっス!30秒かそこらで溶けてなくなる、新感覚っス!!」
キザラを除いた9名の専属料理人が各々に吟味し、米の価値を評価する。
満場一致で『美味しい』、その上で、それぞれが米に合わせるべき料理を夢想しているのだ。
とろとろに香る、牛煮込み。
パリパリと弾ける、秋シャケ。
辛く炒めた、旬野菜。
シチューは?ジャムは?サラダはどうだろう?
そして、それぞれの得意料理との組み合わせを思考した瞬間、例えようの無い希望と多幸感が彼らを襲った。
「姫様からの要望だ。今日の料理アレンジで良い、おにぎりの具を8種類作るぞ」
「振り分けは?」
「2班に分かれて3品ずつ作れ、俺は米を炊きながら2品作る」
「キザ料理長だけ2つ?自信ないんですかー??」
「はっ、馬鹿が。俺と違い、お前らは才能に毛が生えた程度。だが、ロイヤルディッシュに出すメニューに失敗は許されねぇ」
「ヘラの角で張っ倒しますよ?」
「つーことで、お前らが不甲斐なかった場合に備えて俺は4品準備する。一定水準に達してなけりゃ落選だ!!」
「はぁーーっ!?!?」
「なんなら全部、俺が指示を出しても良いんだぜぇ?」
「うるせー!ルル様に頼られたからって調子に乗るんじゃないですよーー!!」
声を張り上げた専属料理人代表タナー、だが、彼女の声は皆の共通意見だ。
彼ら彼女達こそ、ルートルイン専属料理人チーム 『破壊の美食学者』。
文化交流の最先端であるルートルインが見聞きして欲した料理の再現と昇華を担う新進気鋭の料理人チームにとって、新作料理の創造は人生を賭ける価値がある。
料理長キザラの奇行というノイズも解決した今、彼らの才能の100%が惜しみなく料理に注がれる。
それぞれが仕込み途中の料理を見つめ、そして、即座に答えを出して動き出した。
「流石は私が誇る料理人達だ。どんなおにぎりが出てくるのか、すっごくワクワクで楽しみなのだぞ!!」
「任せろ。最高のおにぎりを出してやっからよ!!」
時刻は既に9時15分を回っている。
通常のロイヤルディッシュならば、もう着替えを始めている時間だ。
かなりの名残惜しさを感じつつ、ルートルインはファナティシアに視線を送る。
優しい笑みで許可を貰った彼女は、キザラにバレないようにタナーにこっそり近寄った。
「タナー、ちょっとお願いがあるのだ」
「ルル様!?」
「タナーは煮込み料理が得意だったろう?だからもっと特別な炊飯『炊き込みご飯』を教えるのだ。キザラには内緒なのだぞ!」
上目遣いで行われた、可愛らしい智謀知略。
キザラへの対抗心剥き出しなタナーの心情を利用することで、彼女達のやる気とおにぎりの品質向上を図ったのだ。
ごにょごにょ……、耳打ちで伝えられた情報は、ルートルインも良く理解できていない机上の空論。
タブレットで見た関連動画『秋の炊き込みご飯のつくりかた』の流れを説明しただけ。
だが、それで十分なのだ。
スープ料理のスペシャリストである彼女ならば、出汁の概念と取り扱い方を間違えるはずも無い。
「ルートルイン姫様、お時間です」
「分かった。みんな、美味しいおにぎりを期待しているぞ、しっかり頼むのだ!!」
「「「はい!!」」」
タナーとは別のチームにも上目遣いと入れ知恵を送った所で、9時30分を回った。
既に着替えが終わっていなければならない時間、だが、問題は発生しない。
今から向かう着替え室は、既に準備万端。
ドレスの選定と下準備は完了。
ルートルインを飾る髪型・化粧も短い時間で行えるものにするように指示が出ている。
筆頭メイド、ファナティシアの仕事は、あらゆる障害からルートルインを守ること。
敵意や悪意を消し去るなど大前提。
姫の多忙なスケジュールを管理した上で、主を『健康的な子供』であり続けられるように侍ることこそ、彼女の生きる道だ。
読んでくださって、本当にありがとうございます!!
このお話までが料理編ということで、次話からついに、ロイヤルディッシュが始まります!!
「ルートルインかわいい!!」「キザラ、マジ、ヤクザ」「姫達のリアクション楽しみ!」と思って頂けたら、ブックマークや評価で応援して貰えると嬉しいです!!




