第23話 「姫様は明日が待ち遠しいようです」
「んっ、ふ、不覚なのだ……、そんな、まさかこんな所で……」
「?」
飯を食ってひと心地した所で、ルートルインがそわそわし始めた。
どうやら、さっき見せた炊飯動画が気になるらしい。
俺が片付けをしている間に丁度いいやと思って見せたんだが、不測の事態が起こったようだ。
「どうした?」
「うむ、もっと動画を見たいのに……」
「見たいのに?」
「ねむい、のだ……」
あー、現在の時刻11時。
いつもの睡眠時間を過ぎちゃってるらしいし、ここらが限界か。
「眠いなら寝ろ。ベッド使っていいから」
「うぅ……、だって」
「我慢して見たって覚えられないだろ。観念しろ」
「うぅー。……そうだな、良い子にするって約束したものな」
雑用をしながらの会話によると、ルートルインの夢旅行は寝ることで意識を切り替える。
なお身体はそのままで、普通に寝ている時と同じ状態になるとか。
ルートルインの睡眠時間は、10時→6時の8時間、ということで、起きている時間は16時間。
体感時間で倍の差があるが、特に支障とかないらしい。
「……んっ、イナト」
「なんだ?」
「おにぎり、美味しかったぞ。いろいろ教えて貰ったことも楽しかった。明日が来るのが待ち遠しいのだ」
「!!おう、良かったじゃねぇか」
「にへっ、じゃあ、おやすみなのだ……」
「おう、おやすみ」
ルートルインは安物のベッドと布団に文句を言わず、素直に毛布にくるまった。
姫としての教育を受けている、だが、根本的に良い子みたいだな。
「部屋、暗くするぞ」
「うん……」
電気の照明を暖色に切り替え、照度も最低に設定。
眩しくない様にタブレットの明るさを落としつつ、ルートルインが寝付くまで静かに待つ。
ふぅ……、激動の5時間だったな。
騒いで怒って笑って、顔の筋肉が随分とほぐれちまったぜ。
正直に言えば、これでいいのか?という不安はある。
異世界とか、魔法とか、姫とか、青少年保護法とか……、そういう事じゃない。
ひと一人の人生を背負う。
それは本来なら、もっと時間を掛けて覚悟をしてから行うこと。
伴侶どころか、彼女すらいない俺にとって、子供の保護者になるなんてのは想像すらしていなかった事態だ。
一応、貯金はそこそこあるし、収入もそれなりだが安定している。
直ぐに飯を食えなくなる事は無い、だが、二人分の生活費を念頭において行動しなければ、どこかで破綻してしまう。
せっかくできた友達だ、互いに楽しい生活を送りたい。
「ルートルイン、少し出掛けてくるぞ」
「すー……、すー……」
確認を兼ねた断りを入れ、部屋を出る。
タオルや歯ブラシなどの生活雑貨、それと、靴下を多めに買おう。
ルートルイン用の靴はインターネットで買うとして、それまで使うサンダルのサイズ調整として履かせるためだ。
「明日が来るのが待ち遠しい、か……。俺もだよ」
道路を歩きながら、一人で物思いにふける。
今日は金曜日だから明日の出勤はない。
……『休み』にならない休日なんて、いつ以来だろう。
「いらっしゃいませー」
さっきもいた店員が、少し訝し気に挨拶してきた。
こんな時間に来店する奴はあんまりいないだろうし、不審に思ったんだろうが、まぁいい。
実際、俺も内心でドキドキしている。
12時近くにコンビニに行くって、殆ど経験がない。
「……さて」
必要最低限の生活雑貨しか買わないのは、ルートルインに選ばせたいからだ。
女の子だからと安易に猫柄や♡柄を買って嫌がられたら困る。
せっかく金を使うなら、喜んで欲しいし。
「……ッ!!」
そして、本題。
俺がドキドキしている真の理由、それは……。
「……。オムライスが無い……だと……」
こんなバカみてぇな時間におにぎりを買って食う。
ちっ、そりゃ、品揃えも悪いに決まってる。
くそぅ、ツナマヨも無ぇじゃねぇか。
読んでくださって、本当にありがとうございます!!
ここまでが、第一章の『日本文化編』で、次話からいよいよ異世界革命編になります!!
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