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第22話 「姫様は苦渋の決断を強いられるようです」

 

「それで、結局どれが一番なんだ?」



 俺の空腹もそろそろ限界、いい加減、残りのおにぎりを食わせて欲しい。

 そんな思いを込めた俺のジト目を受け取ったルートルインは顎に指を添え、ううむ、と悩む。

 そして、決意を秘めた瞳を俺に向けた。



「ミルクティーだな!!」

「おい」


「冗談だ。だが、不意打ちだったからな、衝撃的な意味では一番だぞ!!」



 しっかり人工甘味料に脳を焼かれてやがる。

 ちょっと失敗したかもな。

 これから先、飯とは別枠で飲みたいって強請られそう。



「本当に迷う所だな。唐揚げマヨ、五目おにぎり、オムライス。無論、他のおにぎりも高い水準で拮抗している」



 購入したのは、シャケ、昆布、ツナマヨ、唐揚げマヨ、五目おにぎり、焼きおにぎり、チャーハン、オムライスの8種類。

 で、残っているのは、昆布、ツナマヨ、唐揚げマヨ、五目おにぎり、チャーハン3分の1。

 ぶっちゃけ、全部食べた所でまったく足りないが……、よし、昆布から行くか。



「昆布はどうだ?」

「正直な所、私の好み的には一段劣ると言わざるを得ない。……別に昆布が悪いのではないぞ、他が美味し過ぎるのだ!!」


「そうか。じゃ、遠慮なく。はぐ」

「あぁーー!?」



 んー、昆布からあふれ出る、この旨味よ。

 甘しょっぱさとゴマの香り、たまらねぇぜ。



「何をするのだー!!」

「だって全部は食ふぇないだろ。もしゃもしゃ、ほら、さっさと選べ。ずずっーぷはー!」



 おにぎりってのはなぁ、豚汁と一緒に食うことで真価を発揮するんだよ。

 あー美味い。美味すぎる。

 これぞ日本人の嗜み、うめぇー。



「おれ。はらへってる。がまんできない。おまえまってる。はやくしろ」

「くっ、なんて卑怯な奴なのだ。こんな選択を強いるとは……」


「選ばないなら全部俺のな?」

「選ぶ、選ぶからちょっと待つのだーー!!」



 真剣な表情でおにぎりを吟味するお姫様か、絵になるな。

 それはそうと、明日も買ってやるからさっさと選べ。

 いつの間にか22時を回ってるんだぞ。

 いつもなら飯を食い終わって一息吐いている時間なんだよ、もう!!



「……ツナマヨとチャーハンがいいのだ」

「ん?どっちも名前を挙げなかったよな?」



 どうやら、残りの腹的に2つが限界と判断したようだ。

 だが、一番候補に挙がらなかったツナマヨとチャーハンを選んだのはなんでだ?

 まさか、俺に美味い奴を譲って……?



「はは、そんな遠慮なんてしなくていいのに」

「遠慮?いや再現性の問題だ」


「……再現性?」

「唐揚げマヨは肝心のから揚げが分からぬから、まだ作れぬ。逆に、オムライスは直ぐに作れる」


「おう」

「五目おにぎりも油揚げとやらが作れぬ。醤油も無い。だが、ツナマヨとチャーハンは作成できる可能性がある」


「作ってどうするんだよ?いや、食うのは分かるけどさ」



 今までのリアクションを見た感じ、全部を実現させようとしてるのは間違いない。

 だからこそ、すぐに作りたい理由があるはずだが……?



「決まっておろう!次のお茶会で披露する為だ!!」

「ロイヤルお茶会におにぎりを!?」


「運が良いことにランチの当番なのだ。この機を逃す訳にはいくまい。ただ」

「ただ?」


「お茶会は明日、正確には向こうで目が覚めた当日に開かれる。起床が6時で開催は10時。身支度の時間を考慮すると3時間余りしかないのだ」

「無理ゲー過ぎるだろ!!」



 たったの3時間で、どうやって炊飯文化を実現させる気だ!?

 そっちには炊飯器すらねぇんだぞ、ましてや、ツナマヨやチャーハンなんて無謀にも程がある!!



「やめとけ、失敗したら恥をかくタイプだろ、それ」

「問題ない、私の料理人は天才ばかりだ。悪態を吐きながらちゃんと作ってくれるぞ!!」


「うわぁ、姫の我儘に振り回されている光景が見える」

「奴らも楽しんでいるからな。過失があるとすれば、私のおにぎり理解が及びきっていない点だ。という事で、ツナマヨとチャーハンの知識を深めたい」



 悪態を吐く料理人を、『奴ら』と呼ぶ姫様。

 友好的な関係のようだし、ルートルインが信じ切っている以上、俺が文句を言うのもおかしい話か。



「じゃ、唐揚げと五目は俺のな。いただきまーす」

「あぁっー!!」


「はぁー、美味い。なんだかんだ五目だよなぁ、っと、唐揚げは、んー、くりーみー」

「……。くっ!!なんと恨めしい。私の胃袋がもうちょっと大きければ、全部食べられたのにーー!!」



 いや待て、俺の分を残せよ。

 全部食おうとするんじゃない、シェアしろ、シェア。

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