第21話 「姫様はトマトを語る様です」
「オムライス、何たる破壊的美味さなのだ。唐揚げマヨを超える冒涜だぞ」
「そんなにか?」
「私はトマト味に慣れていると言ったな。だがそれは、スープや煮込み料理としての味わい。つまり、トマト以外の複雑な風味も同時に体感している」
「おう」
「だが、このオムライスはトマトが強い。たまご焼きもクリームも、トマトの味を、いや、トマト味になった米を引き立てる脇役だ。トマト好きには溜まらぬに決まっておろう!!」
どうやら、お姫様のおにぎりランキングで堂々の1位に躍り出たようです。
トマトを連呼しているあたり、相当興奮している模様。
「肝心の味はどうだ。そっちの世界のトマトと違うか?」
「ソースの旨味や酸味はこちらの方が強いな。そして、整っている。多彩な調味料によって成される技なのだろう」
「味が濃いって事か?」
「豚汁に入っていた人参での比較になるが、食材そのものの味は私の世界の方が濃いと思う」
「へー、そうなのか」
「だからこそ、最低限の調味料しか使わなくても美味しい。だが、食材の個体差によっては味の主張が激しくなることがあってだな……、このオムライスは純粋なトマトの美味しさだけがぎゅうううと詰め込まれている!!」
なるほど、食材の味を生かす料理だからこそ、当たりはずれが出てしまうと。
果物を例えにすれば分かりやすい。
そのまま食べたイチゴの甘酸っぱさは粒ごとにバラバラだが、砂糖で煮込んだジャムは同じ味になる。
それにしても、食材の品質は異世界の方が高いの……、いや、待てよ。
ルートルイン姫様の食事だぞ?
品質の良い食材だけ使うだろ、どう考えても。
「ちょっと聞いて良いか?ルートルインの日常的な食事ってどんなものが出るんだ?」
「お茶会以外の話だよな?昨日の夕食は、子牛と夏野菜のグヤーシュ、サワークリームオニオンサラダ、バタークロワッサン、ミルクチョコクレープ、果実盛り合わせ、チーズやジャムはその時の気分に合わせて数種類の中から選ぶぞ」
「ドリンクは?」
「父上や母上はワインを嗜む時もあるが、大抵は私と同じ無糖の紅茶だ。茶葉はその時の気分で数十種からだな」
グヤーシュは確か、ビーフシチューに似た料理だったはず。
パン+メインにサラダとデザート、料理の数的には日本のセットメニューと大差ない。
……が、滲み出ている豪華さが全然違う。
デザートと果実が別だし、ジャムやチーズも大量に用意されてるし。
どう考えても、最高品質の食材だけで作られてやがる、そりゃ、最低限の味付けしかしないだろうよ!!
俺だって、超高級寿司を食う時は醤油をちょびっとしか付けないわ!!
「素材によって味が変わる料理か、料理人の腕が問われるな」
「私専属の料理人達は腕利き揃いだ。それでも味付けは個人の趣向で変わる。私も、酸味が強すぎる料理は好きじゃないぞ」
「食材に合わせて調整するから、嫌いな風味が残る時がある訳だ」
「だが、このオムライスは無難に美味い!嫌な所が全くないトマト味!!素晴らしいのだーー!!」




